ひとつの幸せ~第16章~

だがそれがいつまでもつか、という話だ。フリーザ軍の派閥が大きくなるにつれて彼らの目が届くところに行くことにもなりかねない。
「(それだけは阻止したいが…)」今彼は休暇を取り皇嵐と旅行をしている、おかげで遠くなりはしているがカリグラの記憶に触れかねないエリアではあるのだ。
ここ暫く彼と話したりしてわかったが、やはり己と彼は同じ人物なのだと思い知らされる。そして光と影、ではなく闇と影そのようなものだと。
「やつには幸せに暮らして欲しい…」俺ができなかったことなのだから、少しの間でも彼が生きれたと楽しかったと言えるように生きていて欲しいと願う。
家族が、思うような気持ちが自分から溢れてくるラディッツをみると。
『嫉妬でもなく願いか、は!若いのに随分と悟ったなー』
「てめえのを合わせると俺は大人だろうが…。お前が皇嵐に抱いてたのと似てるだろ」生きてて欲しい、どうかこの世界でと。この汚く欲望渦巻く世界であなただけは綺麗で天に咲く華としてあってくれ、と。
そう言うてしまうと、相手は少し黙り口を開く。
『……そうだな、それならば俺としても理解はしやすい』
「皇嵐関係ではないとお前は分からないらしいな」
『俺はあくまで魔王としてあったときのやつの記憶と力を持つものだ、カリグラと言うよりは………魔王や覚めない悪夢と言われた時期の俺だろう。ああ、それとタナトスか』
「タナトス…死の誘惑か」なるほど、確かに自分たちには合うような名前ではないか。
「いいな、それ成り果てた先の俺らしい今度使わせてもらう」なあ俺、お前はそうやって周りと仲良くしていろ。
皇嵐とはもちろんだ、俺らが果たせなかったことをお前はやってみせろ。全ては俺が背負う。
「俺の名前にぴったりだな、タナトスは」もうひとつの闇の名前は俺が貰ってやる。
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