ひとつの幸せ~第16章~

───
紫煙がもくもくと揺れる、亜空間にて月鬼は本を読みつつゆっくりとしていた。
「………」無言でペラペラとめくるのは、この時空の歴史の本と国重が以前ひっそりと渡してきたカリグラの伝記本だ。
『よくそんなもの見つけたな』
『…カリーさんの書斎ですよ、あくまでそちらはコピーですが』何でも以前カリーの様子が気になりひっそりと侵入したところ見つけたらしい。
彼は、何かあってかここの己の前世はだれなのかとしっているようだ。
「皇嵐という神、あれが話したか……」でなくばわかるわけもない、国重から話を聞く限りラディッツは記憶喪失の時期があったようだ。
なんでもかつてカリグラが統治していたことのある星で起きた事によるものだと。死にそうなところ、助かったと。この感じ、おそらく半身であるカリグラがでて助けたのだろう。死ぬべきでは無いところで、死にそうになって。
「ヴァルド星……」いちど死に、己の中にいる魔王のカリグラと距離が近くなったことで名前には覚えがある。特殊能力が強い戦闘種族のようなものたちだ、厄介な洗脳術に動きとしてくる。
臣下の者たちが手こずったのはいい思い出だ、カリグラ相手には効かず簡単に倒され若い副棟梁のようなものを生かした記憶がある。
そいつが未だ生きて、ラディッツを殺しかけたのだろう。なんという因果なのか、ツケが未来の自分に支払わされたといったほうがいい。
「ったく、くだらん事をしやがって…」
『くだらないとはなんだ、俺は愛しい女を手に入れるためにしたことなのにな』ああまただ、またこいつから話しかけられる。
ラディッツの中にいるカリグラと違い、魔王としての面のためか躊躇いなく行動するこの男。
7/9ページ
スキ