ひとつの幸せ~第16章~

「お食事も美味しかったですね!、皇嵐様!!」あのあとふたりとも合流してディナーを食べた。綺麗な個室の高級な空間。普段の自宅よりはるかにも質がよく厳かな空間の食事はかつてすんでいた天界を彷彿ともさせたが、カリグラの宮殿のことを密かに思い出させた。
絢爛豪華な装飾品に、硝子の飾りを施されたシャンデリア……赤いカーペットに細やかな金の糸の刺繍飾り。
カリーがカリグラに仕えていた家系のせいなのか、果は彼の因果なのかどれもこれも彼のところを思い出させるものばかりだ。懐かしくもどこか寂しいような感情が溢れてやまなかった。
「ええ、そうね翼くん」でも悲観してばかりではいられない……、己の命と引き換えに私に幸せをくれた彼のためにも私はラディッツと向き合っていかなくては。
この因果の中に集った人たちとともに。
「それにしても主、よくこういうところ取れましたねーカリーさんのとはいえ」
「色々と頑張ったからだ…」気だるげに遊び疲れか、お食事前にしたことのせいかラディッツは国重へと答える。
軽く伏せる目やだるそうに動く口は、若い頃のカリグラと似ている。彼もそういえばダルそうに、『めんどくせぇなぁ』と会った直後の時は虚空に呟いていたなと。
「(ダメね、今回……彼の器がもう1人きたせいかカリグラのことを思い出すわ)」時々ラディッツの言動でふと思い出す時はあれど、ここまで彼との思い出を思い出すようになるとは。
思わぬ存在の登場でか、果ては何か大きいことがこれから待ち構えてるからこそのむきなおりなのか。
「へぇー、皇嵐様のためにというのが大きそうですねぇそれは」
「っ、それは当たり前だ。お前たちのはついでだ、ついで」
1/9ページ
スキ