ひとつの幸せ~第13章~

「皇嵐は俺の女だ、とな」
「…もう、充分私はあなたにおちてるわよ…」しまった、と思った時には心の言葉が口から出ていてラディッツがばっとこっちを嬉しそうに見てくるのがわかる。
目をキラキラにさせて先程までの男の表情はどこか、今は子供が新しいおもちゃを手に入れたかのようだ。
「皇嵐っ…!?」
「ぅっ!、今のは忘れてちょうだいっ。ビーチの暑さにやられたわ」そうだ、そういうことにしよう。周りのカップルたちの熱によるものだと。それで自分も彼に甘い言葉を言いたくなったのだと。
ああもう!、しっぽブンブンさせて人懐っこい大型犬のように見てくる彼が少し可愛く感じてしまう。
「ならば、ホテルの部屋に行ったら聞かせてくれるか?」目をきらきらとさせて嬉しそうに笑みを浮かべてラディッツは自分に頼んでくる。
そんな顔されたら、頼みを聞いてしまうではないか。
「……そのときは、ね」こんな子犬みたいにすごく嬉しそうにして、あのかっこいい感じの男が。
でもその嬉しそうな顔は、幼い頃の彼を思い出させる。小さい幼子が必死に自分を追いかけてきたときのことも。
「(ほんと、私も彼に弱くなったものだわ…)」年下の必死さと言ったらなんと可愛いものか、オマケにやはり彼の器なのだと思い知らされるカッコいい時もあるし。
なんだかラディッツの魂の中でくすくすとあの男が笑っていそうな気もするが。存外良かった、と一言だけ呟いて己たちを見守っていたりするのかもしれない。
「ならば楽しみにしているぞ、皇嵐」ああそうやって優しく微笑む仕草、嬉しそうな口。やはり彼が未だ若い青年だということを示す。
「期待しすぎないでちょうだいね」ほんと、可愛いものです事。
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