慟哭

だが反対に心臓はまるでなにかにかわるようにあつい、焼かれるような感覚がする。
「…月鬼、きさまの先祖の話を覚えているか?。」
「……せんっぞ、天魔鬼神のかっっ」追放され、この地に根を張った一族の始祖。
魔族、と言われるものたちにより作られた鬼神の一柱。
「お前にはそのものを呼び起こしてもらう礎になってもらう。」
「……俺は、人柱ってか」ああ、納得するさ。この都合の悪い馬鹿馬鹿しい現実に。あの別世界の己。そして翼のこと、色々と辻褄が合い始める。
ジグソーパズルを解いてるような気持ちだ。
なんてくそな現実であろうか!!、月鬼の心の叫びと同時に黒と赤、様々な暗色を持つ火柱が彼を中心にうずまきたつ。
「ハハハハ!、これは成功するか!!?。」皇は高らかに笑う、その姿は民を贄として捧げて己の王城を作り上げる暴君の王のようだ。
「……ラディッツっ、お前がもう少し物分りが良ければ…!!??」強薙は目を見開く。いやまさか、そんな馬鹿な。
今月鬼は己たちで言う地獄の炎と共に贄に捧げられた。そこで、彼は本来死ぬはずだったのだ。
なぜなら火柱がたつ瞬間に体も燃えたのだから。なのに、どうして、なぜとなる。

何故そこに我が子は月鬼は火柱のなか燃やされながらも姿を変えてたちあがろうとするのかと。
ゆらり、とカゲロウのように月鬼は立ち上がる。
取り押さえていて離れていた家来たちは腰を抜かしてがたがたと震えている。
月鬼の髪はゆっくりと伸び始めてる。本来は肩より上まで位だったのに腰より下まで伸び始めてる。
「……っ、なんだこれは」皇は信じられんと言いたげに顔を青く染める。
「………化物かよ」多々羅はぽつりと、一筋汗を垂らしてつぶやいた。
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