慟哭

一年すこしたった頃のこと

分家の真堂の家から一人息子・翼がいなくなり、月鬼村は騒がしくなっていた。
真堂の家は水と雷を司る、攻撃的でありながら柔和なものが多い。同時に次元の管理もしていて、かの家のおかげで今の世界は保たれていると言っても過言ではない。
(一体どういうことなのだ…)月鬼は頭を抱えていた。翼は、己にとって弟みたいなものであった。毎日のように自分の部屋に来ては術について聞いてきたり、家族についての話や付喪神痣丸のことを話す。そして己は微笑ましく見ながら教えたり、相槌をうったりしていた。
彼はまるで爽やかな風のような少年だった、そして純粋で水晶のような綺麗な心を持っていた。一体その心と姿にどれだけ癒されたことか。
「一体どこに…」真言宗武闘派…光言宗のやつらか、翼がいなくなった翌日に真堂家をおそい両親を殺したことは知っている。
もしかして…
(両親がやつを逃がしたのか?)真堂の家は次元や水、雷を司る家だ。"次元の管理"をする専門の家なのだ。
優しくそしてさとい翼の両親なら光言宗が襲ってくることを知って彼を逃がすだろう。
「主……」そう考えていると光忠が来た。今回の占いの結果、翼がどこにいるかについてだろう。
「結果はどうだ?? 」
「……だめだね、きょうも結果はなしだよ」顔を少し俯かせて光忠は月鬼に伝える。今日で365日と少し…、本当にどこに消えたのだろうか。
(次元が違うなら結果はなにもない、か??)時空そのものが違うのだから。
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