共に生きていきましょう~第11章~

午後、昼過ぎとなってラディッツが部屋から出てきた。少し寝ていたのかあげていた髪が垂れ下がっている。
懐かしいと思いながら皇嵐は見つめてお昼がいるのか問うといらないと返ってきた。
「…俺はそんなに食わん。それより夜のでいい、弁当をつくっておいてくれ」
「…そんな遠くに行くの?。」
「あぁ、まぁ……そういう感じだな。」どこなのであろう…、ラディッツと出掛けたところはいくつかある。でも、その中でも弁当が必要なのはなかった。
だけどひとつだけ可能性のはある、あの丘だ。あの…幼い頃の約束を果たしてくれた丘だ。
(まさか……)あそこは、彼にとって秘密の場所。大事な人以外つれていかない所。現にあのときも自分だけだったのだから。
今となってはそんな彼にとって大事ではない己を連れていくはずがない。どこか別の場所なのであろう。きっとそうだ。
「わかった、今からつくっておくわ。」期待しないでおこう、連れていってくれるだけでも喜ばしいことなのであるから。
だけど、少しだけでもわがままを言えば…








(一度だけでいい、あのときに戻りたい……)あの、幸せだったときに。彼と供にいたときに。だから浸らせてほしい、あのときの感覚に。あのときなんだと言う錯覚に。
「……ばかみたいわね」神がいっぱしの女のように懐かしい過去を取り戻したいなどと願うなんて。
まさか己がねがうがわになろうなどと予想できたのであろうか。いや、できない。そうなる予定などなかったのだから。
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