国重はカリグラのことを知っていたが、あまり深く話さず続けた。
「…だが、こいつは離れのとこに…」
「当たり前でしょうね。その花は俺様のとこでも比較的涼しい時期に花を咲かせていましたから。惑星ベジータなら離れの寒涼域で咲かせるでしょうね。」国重は当時のことを思い出しながら話した。そうだ、この藤の花は梅雨の時期の前にその鮮やかな色の花たちを艶やかに咲かせていた。
そして己の主は酒宴を開き妻と共に浮き世の月と藤を愛でていた。自分は刀のなかで主君の幸せな顔を見ながら花を眺めていた。
「だから珍しいでしょう、惑星ベジータは俺様の地域より温暖でこの花が繁殖するには難しいでしょうから。」懐かしげに目を細めて、国重はポツリと言葉を呟く。
「 かくしてそ 人は死ぬといふ 藤波の ただ一目のみ 見し人ゆゑに」国重の朗々とした流れで紡がれる言葉にラディッツは顔をしかめてなんだそれはと聞くとこの花の歌ですとにこりと笑い答えられた。
「といってもあくまでこの花の意味をうたう一部っす。意味は、 こうして人は死ぬというのですね。藤の花のような、ただ一度だけ見たあの人に恋して…」意味のところを国重は強調するように儚く消え入りそうな声で話した。
（まるでいまのあの方ですね…このうたの意味は）扇を出してぱちん、ぱちんと開いては閉じてを繰り返しながら皇嵐のことを考えて思う。
恋しい方を想いながらも忘れたいと複雑な心境にたたされて。