共に生きていきましょう~た第10章~

いまの彼は記憶がなく、覚えていないはず。自分に渡したことも知らないはず。
彼の母親からの記憶なのか。でも、それでも……。皇嵐は混乱して、呆然と眺めるしかできない。ふらふらと藤の花は揺れている。
「………やる。」ラディッツは、皇嵐のそばに近づいてその花を差し出した。
よく見ると少し頬が赤い気がする。
「…ありがとう…」小さく呟いて、皇嵐は受け取った。花に罪はない。
懐かしい匂いが花をくすぐる。そういえば、彼が小さい頃自分に渡してきたときもこういう風であった。
そう、でも違うのは小さい頃は真っ直ぐに自分に好意をぶつけてきたことだ。
「…なぜかわからないが、お前に渡さないといけない気がした。」えっ、と皇嵐は少し涙ぐんだ瞳をあげて彼を見る。
「その花は昔、お袋が見せてくれたやつだ。惑星ベジータには珍しいとかでな…なんか意味もあったが、いまは覚えていない。」
「……そう、なのね。」意味も覚えていないのかと皇嵐は少しうつむき思う。
「ただ俺は昔、そいつを




















誰か一人にあげた気がする。」話された言葉に皇嵐は絶句した。彼は覚えていないはず、なのに……少し思い出しはじめているのだ。
「…それもはっきりとはわからない。だが渡したのは事実だ。」ラディッツ自身も自分が彼女に話していることには驚いていた。
あまり話さなかった己のことについて、自分のことなんぞそんなに話すこともないのに。
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