共に生きていきましょう~第9章~

何度も言い聞かせた、何度も催眠術のように思った。思わなければ、希望をいだこうとするから。
彼は自分が知っている彼ではない。でもやはり、影では求めてしまう。記憶が戻ってほしいと、あのときの彼に逢いたいと。
(複雑ね……)頭でわかっていても、心では認めたくないと思うことは。
そう考えながら止めていた手を動かす。トントン…とリズムよく包丁の音が聞こえてくる。
「……夜食を作っていたのか?。」ラディッツは近くにある椅子に座って皇嵐に聞いた。
「えぇ、国重が来ると思って彼が好きなものをね。」あいつが?、そう言えば国重は以前自分が思い出すべきだと言っていたとき彼女とは古い知り合いだと言っていたなと思い出す。
「…バカパクリの知り合いなのか?。」その言葉に皇嵐は聞いてないのかしらと冷たく返した。
「あなたたちのなかでも一番古い知り合いよ。国重はね」彼と付き合ってると飽きることないわと付け加える。
ラディッツはなぜかその言葉に不愉快な気持ちを抱いてしまう。どうしてだろう、別にどうでもいいことのはず。
あのいけすかないチャラ男な国重が、誉められたからか?。いや自分は興味ない人物のことはどうでもいい。
(なんなんだ、これは…)これだとまるでカリーが以前話していた嫉妬と言う感情ではないか。嫉妬は、好きなやつが他のやつと関わっていること、知ってしまったことでできるものなのだろ。
好きなやつ?、何でこんな言葉が浮かんだのであろうか。
(カリーが言ったからか?)
4/8ページ
スキ