大きな温かい手が私の頬を撫でる。

あぁ、私の神様。

ザンザス様に伸ばした手は空を切り、私を現実に引き摺り戻した。

いつも通りの朝だ。

なんとなくツナさんに会うのが嫌で今日は１人で家を出ようと、鞄を持って階段を降りた。

「クーちゃん朝ごはんどうするの～。」

奈々さんに声をかけられ、食卓を覗くと何食わぬ顔して昨日の家庭教師が座っていた。

「チャオっす。朝食は取らねぇと体に悪いぞ。」

「そうよね～！流石リボーン君偉いわ～。」

嬉しそうに私の分の朝食の準備始めた奈々さんに、要らないなど言える訳はなくしぶしぶリボーン君の向かいの席につく。

『奈々さん、ありがとうございます。いただきます。』

出されたご飯は少食な私には十分過ぎる量ですぐにお腹がいっぱいになってしまった。

これもいつものことで、奈々さんは食べれるだけ食べて残して良いからねと言うまでがルーチンだった。

『奈々さんすいません。帰ってから食べますから……。』

「良いのよ～。私が作りすぎちゃっただけなんだから。ほら、学校いってらっしゃい！」

毎度の事ながら申し訳無くなる。

胃に何か入れればすぐに吐いてしまっていた時に比べれば、ましに成った方だがそれでも奈々さんは完食して欲しいんだろうな。

笑顔の奈々さんを見る度に、私が此処にいることが場違いに感じるんだ。

『……いってきます。』

私は鞄を掴んで家を出た。












今日の教室はいつもより騒がしかった。

クラスメートが何か話し掛けてた気がするけど覚えてない。

ただ漠然とツナさんの事だった気がする。




放課後、引き摺られるように武道場に連れてこられた。

そこには剣道部と大勢の生徒がいた。

「クローチェちゃん！大丈夫？大変なことになってるんだけど。」

『笹川さん。これはなんの騒ぎですか？』

「あんた何も朝から聞いてないの!?」

『忘れました。』

「持田センパイが京子がうけた侮辱のためにダメツナと勝負するんだって。兄のことくらいちゃんと聞きなさいよ。」

『……すみません。』

「まぁまぁ、クローチェちゃんは悪くないんだから。」