書類を取り大広間に戻る途中、結界にヒビの入る音がした。呪具を無力化する結界が壊れかけている。不安を胸に大広間に走った。




「優秀な私こそが此処の主人に相応しいのよ！」
悲鳴に近いカン高い草津さんの叫び声。大広間に飛び込むと、髭切さん、膝丸さんによって床に押さえつけられた草津さん。それを取り囲むように抜刀した、今剣君、前田君、平野君、堀川君、長谷部、北谷菜ちゃん。抜刀はしていなくとも皆刀に手をかけ、強く殺気を放っている。
「放しなさいよ！私の方が優秀なのっ！私がッ私が！相応しいの！私が審神者の方が良いでしょっ！ねぇ！」
喚く草津さんを無視し、まんばちゃんの隣に立つ。
『この事態の原因は？』
冷静に勤めるつもりが自分でも信じられないくらい低い声だった。
「この女が、呪具を使ったんだよ。」
「そうだな兄者。主、恐らく洗脳の類いだろう。」
草津さんを押さえつける源氏兄弟が答える。やっぱりかぁ。
草津さんの前に移動し、しゃがんで目線を合わせる。
『ねぇ。何でこんなことしたの？』
草津さんは脅えた表情をしたからきっと私はとっても怖い顔をしていたのかも知れない。
「私が方が相応しいからに決まってるじゃない！それにむかつくのよ！大したこと無いくせに偉そうにして。美羽さんみたいな無能に手をかけて！皆、私は優秀な審神者になるって言ってたわ。私が此処の審神者に成った方が世の中の為なの！」
あぁ、この人こんな醜い人間なんだ。まるで××や×みたい。腐ってる。
『私さ、自分のものに手を出されるの嫌いなの。私の刀剣（かぞく）が欲しいなら、私を×さないと。』
にっこり微笑んであげると草津さんは小さく悲鳴を上げ、それっきり静かに成った。
『それじゃ、此処から出ていって。』
言うと同時期に解放された草津さんは走って本丸から出ていった。


大広間を見渡すと美羽さんが腰を抜かし、陸奥の守君に起こされていた。ちょうど、こんのすけが来たので美羽さんの荷物を転送してもらい、彼女を門まで送ることにした。
『怖い思いさせちゃったね。ごめんね。』
謝ると、美羽さんは首をブンブンと横にふり、
「椎名さんのせいじゃないですよ！無事に終わって良かったわ～。」
と、ニコニコしてくれた。政府の役人がこんのすけと門の前で待っていたので美羽さんを送り出した。

……彼女が素敵な「主」に成れる事を願う。