薬売りの少女
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北海道の冬は寒い。もうすぐ春を迎えるがそれでも寒い。
……冬は嫌いだ。出きることが少なくなる。
冬に金を稼ぐ手段はほぼ無い。町まで売りにも行けなくなる。だから嫌いだ。金子は大事なのだ。春になるに向け稼ぎ時なのだ。
でも此処等で潮時。
そんな事を考えながら私イレンカは市場に並べた薬を片付け始めた。朝一で荷を広げ、作った薬や薬草を並べ売った。昼を過ぎた今、売上はそこそこだ。大量に用意した痛み止めは殆ど減らなかった。
『クンネ、フレ、もう少し粘ったら狩りをしながら帰ろうか』
黒 と赤 は私の猟犬で狩りに山歩き、薬草採りまで手伝ってくれる賢い子達だ。鼻が利き、ヒグマも恐れない頼もしい相棒なのだ。
……ヴーガルル
フレが小さく唸り声を上げた。クンネは商品の前に座る私の膝に脚を乗せる。強ばってるな。この2匹は普段は良い子なのだが、どうもとある常連さんが苦手らしい。用意した大量の痛み止めは無駄にならなかったようだ。
持って帰るにしても荷物になるし、これから生薬が採れる季節になれば古い薬となり価値は下がる。全部売り付けよう。
「やぁ、まだやってるかい?」
商品を挟んで向こうに黒いブーツ。軍服を纏った常連さんだ。
『もう少し遅ければ閉めるところでしたよ。鶴見さん。』
鶴見さんは軍人さんで日露戦争にも参戦していたらしい。鉄の額当てをしていて、戦争で傷を負ったからだそうだ。
「いつもの薬を有るだけ頼もう。」
『いつものありがとうございます。まだ痛むんですか?』
この鶴見さんは基本的に良いお客さんなんだが時々変な汁を流してる。あとめっちゃ顔を見てくる。
「小蝶辺くん。君の薬はよく効き、副作用が少ない。とても素晴らしい。」
話してる間も私の目から絶対視線が外れないんだよなぁ。
『前にも有るだけ買って行ったでしょう?有難いですが使いすぎには注意してください。』
軍人と言うのは怪我が絶えないのだろうか?
二ヶ月前にも大量に買って行ったのだ。流石に多すぎる。
『もう採集に行かないとこの痛み止めは作れないんですよ。もう春になるにですぐ用意できるとは思いますが正直使いすぎです。』
すべての痛み止めを袋に詰めながら声をかける。
ポタッ…ポタポタ
膝に水滴が溢れたような跡ができた。何かを確かめようとして視線を上げると、すぐそこに顔があった。鶴見さんだ。間近で覗き込んでいたらしい。額から汁が溢れている。
「ああ、すまないね。着物は弁償しよう。」
『いえ、結構です。もともと帰る前に着替えるつもりだったので。』
町に降りる時は和人 の振りをするために着物にしている。アイヌのままだと足元を見られることが多いし、目立ってしまう。
「小蝶辺希くん。私は本当に君を買ってるんだ。是非とも薬剤師として第七師団 に来ないかい?」
黒く濁った目がシサムの振りをした私を写している。まるで悪い神 だ。息をすることさえ許されないような緊張が走った。
その傍らで膝に広がっていく水滴がぼんやりと感じた。
『……冗談が過ぎますよ。はい、痛み止め15瓶。5円でいい。』
「ふふふ。残念だ。」
痛み止めの入った袋を鶴見さんの後ろに立っていた部下らしい男に渡す。どうやらいつもの仏頂面の軍人ではなく、両頬に特徴的な黒子のある男だった。なんかすごい睨んで来るんだが?
一瞬強張った私に気付いたのか鶴見さんはくるりと黒子の男の方を向いた。
「時重くぅん?」
「はぁい♥️」
気持ち悪。急に笑顔になったじゃん。怖。
着物の弁償をと、多すぎるお金を受け取り、鶴見さん達を見送った。着物は帰りに川で洗えばなんとかなるだろう。
……冬は嫌いだ。出きることが少なくなる。
冬に金を稼ぐ手段はほぼ無い。町まで売りにも行けなくなる。だから嫌いだ。金子は大事なのだ。春になるに向け稼ぎ時なのだ。
でも此処等で潮時。
そんな事を考えながら私イレンカは市場に並べた薬を片付け始めた。朝一で荷を広げ、作った薬や薬草を並べ売った。昼を過ぎた今、売上はそこそこだ。大量に用意した痛み止めは殆ど減らなかった。
『クンネ、フレ、もう少し粘ったら狩りをしながら帰ろうか』
……ヴーガルル
フレが小さく唸り声を上げた。クンネは商品の前に座る私の膝に脚を乗せる。強ばってるな。この2匹は普段は良い子なのだが、どうもとある常連さんが苦手らしい。用意した大量の痛み止めは無駄にならなかったようだ。
持って帰るにしても荷物になるし、これから生薬が採れる季節になれば古い薬となり価値は下がる。全部売り付けよう。
「やぁ、まだやってるかい?」
商品を挟んで向こうに黒いブーツ。軍服を纏った常連さんだ。
『もう少し遅ければ閉めるところでしたよ。鶴見さん。』
鶴見さんは軍人さんで日露戦争にも参戦していたらしい。鉄の額当てをしていて、戦争で傷を負ったからだそうだ。
「いつもの薬を有るだけ頼もう。」
『いつものありがとうございます。まだ痛むんですか?』
この鶴見さんは基本的に良いお客さんなんだが時々変な汁を流してる。あとめっちゃ顔を見てくる。
「小蝶辺くん。君の薬はよく効き、副作用が少ない。とても素晴らしい。」
話してる間も私の目から絶対視線が外れないんだよなぁ。
『前にも有るだけ買って行ったでしょう?有難いですが使いすぎには注意してください。』
軍人と言うのは怪我が絶えないのだろうか?
二ヶ月前にも大量に買って行ったのだ。流石に多すぎる。
『もう採集に行かないとこの痛み止めは作れないんですよ。もう春になるにですぐ用意できるとは思いますが正直使いすぎです。』
すべての痛み止めを袋に詰めながら声をかける。
ポタッ…ポタポタ
膝に水滴が溢れたような跡ができた。何かを確かめようとして視線を上げると、すぐそこに顔があった。鶴見さんだ。間近で覗き込んでいたらしい。額から汁が溢れている。
「ああ、すまないね。着物は弁償しよう。」
『いえ、結構です。もともと帰る前に着替えるつもりだったので。』
町に降りる時は
「小蝶辺希くん。私は本当に君を買ってるんだ。是非とも薬剤師として
黒く濁った目がシサムの振りをした私を写している。まるで
その傍らで膝に広がっていく水滴がぼんやりと感じた。
『……冗談が過ぎますよ。はい、痛み止め15瓶。5円でいい。』
「ふふふ。残念だ。」
痛み止めの入った袋を鶴見さんの後ろに立っていた部下らしい男に渡す。どうやらいつもの仏頂面の軍人ではなく、両頬に特徴的な黒子のある男だった。なんかすごい睨んで来るんだが?
一瞬強張った私に気付いたのか鶴見さんはくるりと黒子の男の方を向いた。
「時重くぅん?」
「はぁい♥️」
気持ち悪。急に笑顔になったじゃん。怖。
着物の弁償をと、多すぎるお金を受け取り、鶴見さん達を見送った。着物は帰りに川で洗えばなんとかなるだろう。