雨音
学校内を案内してもらい、体育館まで行こうとしたが私が先生を止めた。
「あの、ここは朝来ましたから大丈夫です」
「そっかぁ、あとは音楽室かな」
「音楽室、そこは」
「ん?嫌だべ?」
「…、いえ大丈夫です」
私は手に力を入れて音楽室の中に入っていく。ここにはピアノが有る。
昔は楽しく弾いていたけど、母と父の期待に応えられなくて、私は辞めた。それ以来ピアノに近寄ることは無かった。
だけど、今日この場所に来たのは運命だろうか?
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます」
「手かしてみ?」
「あ、はい」
私は頷くと手を見せた。すると、手を先生がパチンと叩いた。
「気合い注入」
「…有難うございます」
触れられた手がこの前の肩の様に熱く、嬉しさが込み上げてきた。
「そろそろいくけどいいべ?それともなんか見たいものがあるか?」
「いいえ、大丈夫です」
「なら良かった」
ピアノに見ることができて良かったのかもしれない。良かった。先生といると不思議の気持ちになる。
「さて教室に行きますか!」
「はいっ」
返事をした私は先生の後をついて行った。先生に振られた手がほんのり温かみを感じた。