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花葬

 部屋に案内されてきた(というより半ば連行されてきた)僕を見て、フローリアは歓声をあげた。呆気にとられる侍女たちなど意にも介さず、彼女は僕に飛びついて叫んだ。
「来るの遅いよ!これからはずっとあたしと一緒にいるんだよね?」
 まるで新しいおもちゃを手に入れた幼児だ。僕はおとなしく揺さぶられながら言った。
「お嬢様が飽きるまではずっと一緒にいますよ」
 フローリアは子供っぽく頬を膨らませた。
「その『お嬢様』っていうの、いや」
「なんで?君はお嬢様だろ」
「そうだけど、スイには名前で呼んでほしいの!」
 今度は地団駄を踏む。
「あ、そうだ!」
 笑顔のあまりの眩しさに、フローリアの顔が発光したような錯覚を受けた僕は目を細めた。
「あたしのこと、フローラって呼んで!」
「フローラ?」
 目をちかちかさせながら聞き返す。
「パパはあたしのことそう呼ぶの。スイはお兄ちゃんみたいだから、特別!」
 本格的に目まいがして、僕はよろめいた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
 きょとんとしながらも目を輝かせているフローリアに、半分諦めながら僕は言った。
「ただ、僕たちは一応会ったばかりだろう?よく知りもしない相手をいきなり兄呼ばわりするのは、あんまりよろしくないんじゃないかな」
「どうして?あたし、スイのことちゃんと知ってるよ」
 フローリアの笑顔が少し得意げになる。
「スイは、あたしにコートをくれて、おいしいパンをくれて、いろいろお話してくれた。それで今はここにいるでしょ」
 嬉しくて嬉しくて仕方がない、という笑顔に、僕はすっかり抵抗する気力を失い、白旗を振った。
「分かったよ…。じゃ、フローラ。これからよろしく」
 少女は満面の笑みを咲かせた。
「よろしくね、スイ!」
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