膝枕/俺の人魚はおまえだけ

「ねえ、テルたん♡。テルたん♡は、どこで膝枕を覚えたの?」

純粋な疑問だった。
わたしは人生で一度も膝枕をしてもらったことがない。
だから、誰かにしてほしいと思ったこともなかったんだけど、彼は以前から[[rb:膝枕 > それ]]が好きみたいだった。

「なっ」と顔を赤くして、口をパクパクさせているテルたん♡。
テンパってる姿はなんだか可愛く見えて、イジワル心がむくむく育つ。

「言いたくないなら、言わなくてもいいよ」
「そういうわけじゃないけど……べつに、隠すようなことでもないし」

小声でなにやら唱えた後、再度テルたん♡は話し始める。

「子どもの頃、なかなか寝付けなかったとき、おばあちゃんがしてくれたんだ」
「そっかあ。てっきり元カノ、とかが出てくるのかなあと思ってた」
「おまっ……、なんでそういうの、あっけらかんと言うんだよ!大体、頼んでしてもらったのはおまえが初めてで――」

……ってちがう!今の無し!

慌てたように取り繕うのが面白くて、思わず口元が緩んでしまう。

「じゃあ、膝枕は“マスターの人魚”に教えてもらったんだね?」
「…………」

この話は終わりだと言わんばかりに、テルたん♡はくるりと背中を向ける。
もしかしたら、機嫌を損ねてしまったかもしれない。
それでも、わたしの膝に預けたままになっている重みが、とても愛おしいな、と思った。

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