座敷童子の紅子さん
「セーラー服だって今しか着れないんだしさ!ほら、座敷さん綺麗で黒髪だし可愛いしセーラー服着た座敷さん見たいな!!」
「ば!?」
結局セーラーかよと豆と二人呆れていれば玄関の方から鼻歌とガサガサとビニール袋の擦れる音が近づいてくる。
「ギャーッッ!!!紅ちゃんの部屋のドアが壊れてる!!!」
吹っ飛んでガラ空きの入口から「べッッ紅子ちゃーん!!無事!?」とバタバタと足音を立てて入ってきたのは山から帰ってきたらしい稲荷だった。
「は?」
4人と目が合い固まる稲荷。
「あ、空狐」
呑気にしている座敷。
「あちゃー空狐ちゃん帰って来ちゃった」
あちゃーのポーズをする豆と察した俺。
「えっと……君は確か…」
座敷の前に立ったままの晴明。
説得をすると言う話だったのに、よりにもよってドア壊してまで座敷の部屋の中にまで入って居る俺達を見て数秒固まっていた稲荷は、持っていた荷物をドサっとその場に捨て置きズカズカと晴明に近づくと
「キャーッッ!!」
「ぶべらッッ」
何故か悲鳴を上げながら晴明を平手で吹っ飛ばした。
「な…なぜ…」
そう言えばコイツはあの話知らなかったな。
再びキッキンに突っ込んだ晴明に豆が親切に原因を教えてやる。
「空狐ちゃんは紅子ちゃんの過激派なんだよ!去年もそれで何人か燃やして土に埋めてたの!」
「そ、それって死んでないかな!?」
「大丈夫!ほとんどやられてるのは泥たんだから!」
「泥田坊だから燃やされても埋められても死なないよ!」なんていい笑顔で言う豆に晴明は「何も大丈夫じゃないよ!!」と声を上げる。
「あーッ!!紅ちゃん!今日は鍋パするから部屋片しといてって言ったのに!!」
「ヤッベ忘れてた…」
二人だけで鍋パするのかよ。鍋の材料だろうネギやら肉やらが入っているビニール袋を拾って端に寄せてといてやる。
女子は個々の部屋があるが座敷と稲荷は稲荷が座敷の部屋に入り浸ってあれこれ世話を焼いているせいかやたら生活感がある気がする。
そして不審者をぶっ飛ばしてから周りの散らかった惨状に気がついたのか部屋を見渡した稲荷の視線がぐるりと座敷に向き、自分に向いた事により座敷はバツが悪そうな表情をしたがすぐに閃いた顔でニヤリと笑うと晴明を指差した。
「さっきそこのセンコウが私の下着に頭擦り付けてたぞ」
「ハァー!!!?」
「ハァァァアアッ!!!?!?」
怒りに吊り上がった稲荷の金色の眼が晴明を突き刺し、突然生贄にされた晴明は凄まじい顔で座敷を振り向き、危険を感じた俺は豆を抱えて巻き込まれる前に部屋を逃げ出した。
「このクソ変態野郎が!!!!死に去らせぇぇええ!!!!」
女子寮の外に出れば次の瞬間には晴明が窓から勢いよく吹き飛ばされていく。
「どうして僕がこんな目に…」
頭にコブをつけて木に引っかかったままショボくれる晴明を豆と二人見上げ、顔を見合わせ頷いた。
そしてそのまま男子寮に帰る為に歩き出す。
「あーん!!佐野くん!狸塚くん!置いてかないでよぉー!!」
後ろから聞こえる馬鹿の悲鳴は聞こえなかった事にして。