レッツ・体育祭の準備!
そろそろ5月も終わるという時期。
百鬼学園では体育祭の季節が迫っていた。
「と、言うわけで明日の体育祭にむけて今日は準備をするよ」
「クジを作ってきたから引いてね」なんて言って手作りだろうクジを入れた箱をガサガサと振って見せた晴明は、それを床に置いてから手元のクラス準備用の紙を黒板に書き込んでいく。
「えっと…うちのクラスはグラウンドでテント張りと、備品の準備と、人面岩転がしの人面岩準備…ん?人面岩ってなんぞ?」
「人の顔した岩だよ!人面魚の岩ver.だよ」
晴明は豆の言葉に単純に顔のある岩を思い浮かべたのか「そ…それを転がすの?」と引いている。
「体育祭か〜タルいなぁ」
「まぁ、クラス対抗だし。最下位にはならない程度には頑張ろうぜ」
面倒くさがる狢に猫の姿の玉緒を膝に乗せた入道くんがそう言い、玉緒も「晴明のためにも負けられないな」とやる気なさげにしながらも一応ビリにならない程度には頑張るつもりらしい。
そんな生徒たちに「いやいや!」と待ったをかけたのは晴明だ。
「そんな気負わなくても楽しんで参加できたらそれでいいんだよ!」
やたらとにこにこしている晴明の様子に泥田が頬杖をついたまま「ん?いやに悠長にかまえるな」と怪しいものを見る目で見る。
「もちろん優勝はしたいよ!!でも、同じくらい楽しむことも大事だと思うんから気張りすぎもよくないかな〜って」
「最下位になったら殺される訳じゃあるまいし」なんて呑気に笑う晴明は、どうやらこの学校の体育祭がどんなものかを誰にも聞いていないらしい。
てっきり神酒か秦中が忠告していると思っていたが…もしや振り落としの為に敢えて教えられなかったのか?なんだかんだいってあの2人、考えがゲスいもんなぁ。
「…お前、他の先生から何も聞いてねーの?毎年最下位のクラスの担任は負けたら罰ゲームあるんだぞ?」
呑気なアホ担任を流石に哀れに思ったのか泥田が罰ゲームの存在を教えてやれば晴明は「何それ初耳!!」と驚愕する。
「何でも100年くらい前に学園長が…」
『なんか普通に勝った負けたで終わりってつまんなくない?罰ゲームいるっしょ』
「ーって言ったらしい」
「何考えてんだあの学園長!!」
それは同意。絶対暇だから思いついたんだよそのルール。どんなに厳しい罰でも自分は関係ないもんねアイツには。
「ちなみに昨年は誰が何の罰ゲーム受けたの?」
「えーっと…たしか昨年はネズミ先生が猫カフェに連れてかれたらしいぜ」
「えぜつねぇ!!!」
アレもなかなかに長生きな妖怪だが猫に物理的に食われたら死ぬしかない。
まぁ猫カフェは猫カフェでも、猫妖怪が接客するカフェだったおかげで死なずにすんだわけだが……ヨダレを垂らす店員たちに命を狙われながら飲むコーヒーなんて味がしなかっただろうに。
それに比べて晴明は人間だしな…同じくらいの罰というと大江の山に簀巻きにして放り込むとかが妥当かな?
まぁ食われる前にする回収誰が行くんだって話だけどね。
「くそぅッ!!!だから先生たちあんな暗かったんだ!!」
行儀悪くも教卓の上に立って頭を抱える晴明。
露骨に態度に出しながらもその理由を教えてもらえないあたり他の教師たちにビビって距離取られてるか、今年の生贄にしようかってとこだと思う。
まぁ私は秦中たちが言わなかったなら後者だと思うけどね。
なんて考えていれば教卓の上に立っていた晴明が、そのまま入道くんと狢の机に手をつく形で仰け反り「どうしよう!!」と見事な立ちブリッジを披露する。
いや、何で?
「結局なんやかんやで僕が罰を受ける未来しか見えない!!!」
せやな。というか、多分このクラスの生徒大半がみんな同じこと思ったと思うよ。
「ま…まぁ今から勝ち負け気にしても仕方ねぇよ」
「そ…そうだね…」
「それより今から体育祭の準備するんだろ?何すればいいんだ?」
「そうでした!!」と笑った晴明はそのまま入道くんを見る。
「とりあえず起こすの手伝ってもらっていいかな?」
「自力で起きれねーなら
あっはは!てっきり自力で戻れるのかと思ったら戻れないのかよ!それなら何でそんな不安定な場所で立ちブリッジしたのさ!
呆れた入道くんに手を貸してもらってなんとかブリッジから戻った晴明が腰を摩りながら「引いたら何番だったか教えてね…」とくじの箱を教卓の上に置くと生徒たちが教卓の箱からくじを引いていく。
くじには壱、弐、参の数字が書かれていて紅ちゃんは壱で私は参だった。
「え〜紅ちゃんと離れちゃった…」
「まぁくじだからな」
「私の終わったら手伝いに行くね!あれ、でも紅ちゃんの方が終わるの早いかな?」
「さぁな。しかし人面岩なんて何処にあるんだ?」
「え?さぁ…去年どうしてたっけ?」
「他の先生に聞く?捕まえてくるよ!」と聞くが紅子ちゃんは「いや、いい」と紙を机に置いて頬杖をつく。
「あんなデカいんだし、ちょっと探せばすぐ見つかるだろ」
「皆引き終わったかな?一応黒板に名前を書いておくから分からなかったらそれを見てね」
空っぽになった箱をしまった晴明が数字の下に生徒たち名前を書いていく。
壱
入道、泥田、玉緒、座敷、歌川
弐
倉橋、佐野、豆塚
参
秋辺、尾形兄弟、小泉、蓮浄、小田原、雛菊、五月姫、前田、麻理鈴、狢、柳田、桃山、大田、藤平、小古曽、富士、稲荷
いや、参番多ッ!こんなにいるなら少しくらい早く抜け出してもバレないんじゃないかな…
「よし!じゃあくじで壱番引いた子は人面岩準備班で、弐番は備品の用意で、参番はグラウンドでテント貼りね。今から取り掛かってください!終わった斑から帰っていいよ」
解散!と言ってパンッと両手を合わせる笑顔の晴明に
「弐番少なくね?3人しか居ねぇじゃん」
「まぁ細々した荷物運ぶだけだしな」
なんて会話をしながら移動して行く生徒たち。
そんな中、空狐は黒板を見ながら腕を組む。
「うーん紅子ちゃんと一緒なのは佐野と泥田か…メンツ的には不安だけど入道くんと国子ちゃんが居るし、なんとかなるよね…」
「でもやっぱり心配だからさっさとテント片して紅ちゃんのとこに行こう」と後ろを振り向けば目の前に前田くんが…
「ギャッ!!前田くん!!?」
急なことに驚いて、後ろに飛び退こうとして黒板に頭を思いっきりぶつけてしまった…
めっちゃ痛い…でも今は痛みとかどうでもいい!!だってものすごく恥ずかしい!!!
「稲荷さん大丈夫?今すごい音したけど…」
「だッ大丈夫!!大丈夫ですうん!!」
いきなり至近距離の前田くんは心臓に悪すぎる!それにマヌケなところを見られた!そのせいもあってまさに顔から火が出そうなほど顔が熱い!!
慌ててドアに距離をとって髪に付いたチョークの粉を払ってみるが自分じゃどうなっているのか見えなくて落ちてるのかもよくわからない。
最悪だ…あ、でも髪白いからパッと見わかんないかアハハと半分現実逃避しながらそろそろと前田くんから距離をとっていれば、教室を出ようとするゆりちゃんにぶつかりそうになってしまった!申し訳ない!!
でも今は天の助けとばかりにゆりちゃんの沢山ある手に縋り付く。
「まぁ、何してますの?」
「ゆりちゃん!!」
「どうしましたの。髪に何かの粉が付いてますわよ?これは…チョーク?」
「ゆりちゃんもテントだったよね!?一緒に行こう!!」
「それは構いませんけど…」
ゆりちゃんはチラリと後ろに居る前田くんの方を一瞥する。
「よろしいんですの?」
ゆりちゃんはせっかく前田くんが居るのにいいのか、と言いたいのだろう。でも今はとにかく距離を取りたい!!そんでもってチョークの粉をどうにかしたい!!!
だから全然大丈夫!!!
私は怪訝そうにするゆりちゃんに「うん!!!」と力強く頷いた。
