魔の身体測定
今日は身体検査の日。
正直言って成長期なんてとっくに終わってるし、どうせ変化ないんだからやる意味を感じない。
何より、今日は奴がくる日でもあるのでもはや帰りたいまである。
「今日はこれから身体測定なので体操着に着替えた後、各自先生の指示に従ってください」
人間教師が「太ってたらどうしよう」やら「背ぇ縮んでたらどうしよう」なんてソワソワしている生徒達を見て微笑ましげに笑っているが、もはやそんな事はどうでもいい。
大切なのはこれからどうやってこの行事をバックれるかだ!
1番いいのはやっぱり小狐になって隠れる事かな…問題はどこに隠れるか。物陰とかはあの目で探されたら一発だったので他の方法を試してみたい。
と、言う事で灯台下暗し作戦。シンプルに教室の自分の席に隠れてみることにした。
しかし着替えるだけ着替えて、小狐姿に化けて気配を消して椅子にべったりと張り付いていたら体操着に着替えて戻ってきた紅子ちゃんにあっさり見つかって「とっとと行くぞ」とひっぺがされてしまった。
びっくりするぐらい簡単に見つかったんだけど…
「紅子ちゃん何でわかったの?」
「いや、去年は手の込んだところに隠れて見つかってたから今年は簡単な所に隠れようとするだろうなと思ってな」
「その第一候補が教室だった」と笑う紅子ちゃんについ脱力してしまう。
「凄いや紅ちゃん…そしてその推理力を是非テストにも活かしてほしい…」
「それはそれ、これはこれだろ。つーか一年近く一緒に居れば大体の行動パターンくらいわかるようになる」
そうなんだ…私はいまだに紅ちゃんの行動パターンわからない事多いけど、もしや私は思考回路が単純ってこと?
そして紅子ちゃん今日はいつになくやる気満々だね?
「…ねぇ紅ちゃん帰っていい?今日はなんだかお腹が痛い気がするんだ」
「気がするだけだろ。で?まずは何処だ?」
えっ嘘でしょ紅ちゃん。今まで堂々と歩いてたのはなんだったの?と言うか此処どこ?
「あーっと…じゃあ視聴覚から行く?場所は壱年参組の教室だよ!で、歯科が参年伍組で視聴が視聴覚室で身長とかが体育館!」
「場所的に体育館最後かなぁ」と紅子ちゃんの腕の中で現在地を確認しようと辺りを見渡しているとスタスタと歩いていた紅ちゃんがピタリと止まった。
「おい大事なこと忘れてるぞ」
ギクッ
ダラダラと冷や汗をかきながら黙ってみるも紅子ちゃんの視線が頭に突き刺さる。
「えへ…やっぱり行かないとダメ?」
きゅるんと可愛く小首を傾げて見せるが小狐姿を見慣れている紅子ちゃんには全然効いてない。これが国子ちゃんならまだもうちょっと騙されてくれるんだけどなぁ…
「ダメに決まってんだろ。特別検査、ついてってやるからちゃんと行け」
ここで見捨てず着いてってくれる辺り紅子ちゃんの優しさを感じる。いや、ただ見張るためかもしれないけども…
「でもね紅ちゃん!あれは無理に行かなくってもいいものなんだよ!?別に注射が嫌なんじゃなくて!本当に!!」
「はいはい、注射じゃなくてあの医者が怖いんだろ?もう何度も聞いたわその話」
「だってアイツマジでヤバいんだもん!!」
紅ちゃんの腕の中でバタバタと暴れるも直ぐにキュとされて動けなくなってしまう。
ズルいよね?どうせ佐野の奴は今年もどっかでサボってるのに…
教室から教室への移動中は拘束されたまま道案内をするナビと化し、順調に測定を終わらせてついに最終ステージ、ラスボスの所までやって来てしまった。
ちなみにやはりと言うかなんというか、全てにおいてなんの変化もない。
紅子ちゃんがガラリと保健室のドアを開ければ、何故が頭に包帯巻いてる人間教師とその教師に抱っこされている猫と狸とついでの鼠、そしてニコニコ笑顔の神酒に摘まれている精神瀕死のイタチが居た。
丁度全員恐怖のワクチン摂取が終わったようでシクシクメソメソ泣いている。
「やぁ!稲荷さん!!そろそろ来ると思ってたよー」
待ってましたとばかりに白衣姿の
それによりこちらに気がついた晴明が「あれ?」と紅子ちゃんを見る。
「座敷さんどうしたの?それにその狐は…」
「何だ知らんのか、この狐は空狐だ。ほら着いたぞ、いい加減ぬいぐるみのフリしてないで診察を受けてこい」
「えっ稲荷さんって動物妖怪だったんだ!あれ?そう言えば稲荷さんも妖怪図鑑に乗ってなかったような…」
無慈悲にも看護師に私を渡して言う紅子ちゃんに晴明が驚きの声を上げ、看護師に摘まれてる私を見てくる。こっち見るな目潰しするぞ貴様。
「空狐ちゃんも注射しに来たの?」
「いや、彼女は注射よりも体の調子を調べる為って言うのが本命かな」
ちょっと泣き止んだ豆が晴明の腕の中からこちらを見て聞くと、鼻歌を歌いながら注射器を選んでいたたかはしが答える気力のない私に変わって答えた。
何でもいいからもう早く終わってほしい…
「えぇ!?稲荷さんどこか悪いの!?」
「あれ?阿部先生は知らないの?彼女は背中に妖力封じのお札が貼ってあるんだよ」
ペラペラと人様の事情を話すこの野郎は小狐スタイル故に丸見えになっている背中の札を晴明に見せるようにして言う。
「すごいよねーこれ、彼女の手作りなんですよ!」
「やッッと調べられる♡」と興奮した声で注射器を持つ
ねぇ、これ動物虐待だと思うんだけどどう思う?か弱い小狐を解剖して標本にしてやろって目で見てくるんだコイツ…
「あの…すごい震えてるんですけど本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよぉいつもの事なので!」
「そうなんだ…」とドン引きながらもあっさり引き下がる変態教師のなんと役に立たないことか「じゃあ僕たちはこれで」と言って保健室を出て行ってしまった。
そしてプスっと注射してハイ終わりとならないのがこの男。
「じゃあ次は体に異変がないか調べようか!」と笑顔でガチャガチャと謎の道具を取り出しだす。
男どもはさっさといなくなってしまったし、紅子ちゃんはスマホでゲームしてるし何より私の健康診断賛成派なので庇ってくれるはずもなく…
「元妖怪の神様…診察のしがいがあるんだよね♡」
高揚とした笑顔て言う知識欲キメてる
「まぁまぁそう逃げないで」
最後に見た「大丈夫♡直ぐ終わるから…」とメス片手に目が笑ってない笑顔でにじり寄ってくる奴の姿は誰がどう見ても事案だったと思う。
