幻覚

ラ「……は？」
ブ「な…な…」
ラ「！」
ブ「乙女四重奏の四重幻奏が破られるなんて！
アタクシの可愛い可愛い娘達ィー！！！」

ブリアンナは倒れている4人に駆け寄っていく。

ｴﾊﾞ「まさか…全部、幻覚だったってワケ！？」
ビ「どんだけ広範囲の幻覚魔法だよ…」
『やっぱり…』
フ「やっぱりって…レイナ、わかってたのか？」
『何となく違和感だけは感じてたわ。私、幻覚魔法属性の幻竜も使えるから幻覚魔法には少し耐性があるの』
フ「そうだったのか」

レイナと会話していたフリードがラクサスの方を不意に見れば、ラクサスの魔力が彼自身を包んでいた。

ラ「今までの戦いが全て幻だぁ…？フザけんじゃねーぞ、コラ…」
フ「(やばい…ラクサスの魔力が行き場を失っている…！！！)」
ブ「あﾞ？」

その瞬間辺りの景色が一気に薔薇の花畑に変わる。

ブ「せっかくウチの娘（こ）達が無血で可憐に美しく！この場をおさめようとしてたのに…
許さないワ」
ラ「ギルドマスターが相手してくれんのか。願ってもねぇ！！」

ラクサスは雷を纏い、雷鳴の如く一気にブリアンナとの距離を詰める。

ビ「待て！落ち着け、ラクサス！」
ヒ「まずいぞ……！！今、2人の強力な魔力がぶつかったらひとたまりも…！！」

ラクサスがブリアンナに雷を纏った右拳を叩き込もうとした時、横から割って入ってきた一夜の顔面にそれが直撃した。

ラ「なっ」
ﾗ･ﾌﾞ「一夜！？/一夜チャン！？」

ラクサスとブリアンナの間に割って入り、その顔面にラクサスの雷を纏った拳を受けた一夜に一同が驚く。雷神衆に至っては｢いつの間に拘束を…｣と呆気に取られていた。
ラクサスの拳を受けた一夜はその衝撃で飛ばされていく。

ヒ「一夜さ──ん！」
一「メェ──ン！
ラ……ラクサス君、その拳は収めたまえ…
このナイス面（メェン）に免じて！！」
ﾚﾝ「ボロボロじゃないっスか──！！！」

ラクサスの雷をモロに受けた為、一夜は一撃でボロボロになっている。

ラ「オイ、オッサン何言って…」
ブ「完敗よ…」
ラ「何ィ───！！！」

膝をつき降参を告げたブリアンナにラクサスは驚愕する。

ブ「愛する人に血を流させてしまった…！！アタクシに一夜チャンを引き止める資格はないワ！！！」
ｿ･ﾘ「お姉さま…！！」
一「涙を拭くんだ、マドモアゼル」
ブ「一夜チャン…！！」
ヒ「どこまでも女性に優しい！！」
ﾚﾝ「やっぱりあんた、イケメンだぜ」

茶番のようなものが繰り広げられる中、ラクサスは怒りで身を震わせていた。

ラ「(フザけてんのか、ああ！？)」
フ「ラクサス」
ラ「アンタが攫われたから俺達は助けに来たんだぜ、なぁ
これは茶番か？何が面（メン）に免じてだ。ナメんのも大概にしろよ」

ラクサスは自身の中に溜まった不満を一夜にぶつける。

一「フザけてもないし、ナメてなどいないさ。
助けに来てくれてありがとう」

一夜の礼にラクサスは呆気に取られる。

一「正直、君達が先陣を切って来てくれるとは思わなかったよ。こんな嬉しい日に争い事など、スマートじゃあない。帰ってシャンパンでも開けようじゃないか」

一夜はそう言って深紅の舞姫の扉をくぐり、青い天馬へと戻っていく。その背をトライメンズも追い、ブリアンナは｢一夜チャーン、また来てねぇ！、｣と声をかけていた。

ラ「………」

ラクサスはただ呆然と立っていた。
そして、一同は青い天馬へと戻った。

「一夜さん奪還を祝して〜〜！！」
「いくぜぇ！！」
「イケメン、飲みたい、騒ぎたい！ハイ！」
「ナンバーワン、ナンバーワン!!ナンバーワン、ナンバーワン！！」

青い天馬ではシャンパンタワーが積み上げられ、ギルドメンバー達のコールが響いている。
そんな中でラクサスは窓際に座り、黙って窓の外を向いていた。雷神衆はそんなラクサスの様子を伺っていた。