攫われた一夜

ラクサスは街を歩いていた。

フ「ラクサス…」

そのラクサスをフリードが呼び止め、ラクサスは振り返り、雷神衆とレイナ、カリンを視界に捉える。

ラ「おまえ達、仕事は」
ｴﾊﾞ「休憩もらってきたの」
ビ「一体どうしたんだよ」
『なんかラクサスらしくないっていうか…』
ｶﾘ「うんうん、レイナの言う通り」

皆から問われ、ラクサスは言葉を考える。

ラ「なんつーか…おまえ達は凄いな」
全「『？』」
ラ「今思えばよ、妖精の尻尾は拳があればわかり合える奴ばっかだったな」

ラクサスの言葉にフリードは一瞬黙り、言葉を紡ぐ。

フ「もしかしてラクサス…
青い天馬への馴染み方が掴めない…のか？」
ラ「悪いか」

フリードの言葉に図星をつかれたラクサスは照れているのか少しぶっきらぼうに言う。

フ「………ぷっ」
ビ「くはっ」
ｶﾘ「『ふふっ』」
ｴﾊﾞ「本当不器用ね、ラクサスは」
ラ「笑うんじゃねぇ。
つーか、魔導士ギルドがなんでホストやってるんだよ。あのオッサンの存在が謎だしよ…。あれが慕われるとか、相当なギルドだろ」
フ「すごい魔導士らしいけどな」
ビ「エルザ曰（いわ）く」
ラ「意味わからん」

表情が歪む程、ラクサス達には一夜が謎らしい。

ｴﾊﾞ「青い天馬は肌に合わない？」
ラ「あぁ、合わねぇな。
マスターは男か女かわかんねーし、野郎共はみんななよっとしてて張り合いがねぇ。隙あらばコール、隙あらばシャンパンタワー…
うるせえったらありゃしねぇ。
まぁ、バカみてぇに騒ぐ家族（ギルド）は嫌いじゃねぇけどよ」
『騒ぐ点に関してだけは、妖精の尻尾と一緒だものね』

ラクサスの言葉に雷神衆、レイナ、カリンは笑みをこぼした。

ﾚﾝ「いた！雷神衆！！レイナとカリンも！！」

そんな時、彼らの元にトライメンズの3人が慌てた様子で駆け寄ってくる。

ビ「どうした、トライメンズ」
ﾚﾝ「緊急事態だ！
このままでは、青い天馬の存続が危うい…っ」
ラ「何…？」
イ「一夜さんが…」
ﾚﾝ「一夜さんが攫われたんだ！！」
ヒ「くっ」

トライメンズは少し大袈裟な反応をしながら｢うぉぉぉぉ｣やら｢一夜さーん｣やら｢おしまいだー｣やら叫んでいる。ラクサス達は呆気に取られ、思わず呆（ほう）けてしまう。

ラ「………は？」

青い天馬の窓ガラスには、｢Ichiya is in my grasp！（一夜＝ヴァンダレイ＝寿はいただいた）｣と書かれ、その下に口紅によるキスマークと共に｢Led Princess（深紅の舞姫）♡｣の文字もあった。