アヨン

ア「『混獣神（キメラ・パルカ）』
解放したあたしたち3人の左腕から創ったあたしたちのペットだ。名前は〝アヨン〟」

アヨンと呼ばれたそれを見た雛森と乱菊は背中にゾクリと寒気を感じる。

乱「(何……？この…寒気……
なにか…そこの見えない深い穴を覗き込んだような────……)」

その時、キョロキョロとしていたアヨンが突然、乱菊達の方へ向かってくる。

乱「！！
灰猫！！」

乱菊はすぐさま反応し、灰猫の灰でガードしようとする。しかし、アヨンのスピードは速く、気付けば乱菊は右の腹を抉られていた。

ア「あァ、言い忘れてた。アヨンは死ぬほど強いから気をつけろよ」

腹をえぐられた乱菊がグラッと傾く。

雛「乱菊さん！！！」

血を流しながら落下していく乱菊を雛森は追いかける。

雛「乱菊さん…っ！」

そして、辛うじて乱菊の死覇装の袖を掴んだ雛森は鬼道を練った。

雛「縛道の三十七！『吊星』！！！」

雛森と乱菊の下にハンモック状の鬼道が出現する。

雛「まってね、乱菊さん！！すぐ治すから…！」

乱菊は息苦しそうに息を吐き出していた。

雛「(肋骨の下から腸まで抉られてる…。これじゃ呼吸できない…。急がないと…！)」

しかし、そのすぐ側にアヨンが立っていた。

雛「！！！」

雛森はすぐに斬魄刀を抜刀するが、やはりアヨンに負けてしまい、雛森は骨が折れるほどに強い力で殴り飛ばされてしまった。

雛「(あたしも…乱菊さんも…一撃…。めちゃくちゃだ…。こんなの…勝てるわけないよ……)」
「縛道の三十七『吊星』！」

アヨンに殴り飛ばされてしまった雛森をハンモック状の鬼道が受け止める。雛森は｢吊星｣の発動者を見遣る。そして、アヨンの方は右手の首に黒い鎖が巻き付く。
それらの正体は柱を守り終え駆けつけた吉良、檜佐木、そして冬華だった。

檜「…よく頑張ったな。少し休んでろ、雛森
こいつは…、…俺達で片付ける」
『…………』

3人はアヨンを静かに見据えた。

ア「…あン！？
何だあいつら？」
ス「仲間でしょ。柱の方から来たのを見ましたわ」
ア「見てたんならなんで止めねえんだよ、てめえ…
ちっ…。次々手助けに来やがって…。他人の戦いに手ェ出すのが好きな連中だぜ…
アヨン！手ェ出すヒマなんかやるなよ！とっとと殺せ！！アヨン！！」

アヨンに指示を出すアパッチだが、アヨンは何の反応も示さない。

ア「…シカトかよ、あの野郎…」
ミ「やめな、馬鹿。アヨンにあたしらの言葉なんか聞こえるワケないだろ」
ア「どっかに鼓膜ぐらいついてんだろ！なァ！？」
ス「知りませんわ。あの子がこっちのセリフにリアクションするところ見たことありませんもの」
ア「…ちっ
やっぱ出すんじゃなかったぜ…。気味の悪りィ奴だ」