カンファレンス

翌日、カンファレンスが行われた。

新「14歳では、早産のリスクも高まりますが大丈夫ですか？」
『状態の変化に気をつけ、必要に応じて早めの管理入院を考えてます』

新井の質問に優香が返答する。

四「妊婦は中学生。経済力もない。…頼れる人もいない、…か」
白「じゃあ、誰がベビーを育てるんですか？」
向「父親は、元倉亮くん
ご両親に連絡を取りましたが、玲奈さん側で育てる事で話はついてるからと養育の意思はありませんでした」
白「妊娠はなかったことにしたい訳ですか…」
下「酷い…」

父親側の家族の返答に対して下屋は呟いた。

向「今、児童相談所と対応を検討中です。公的な支援を受けながら、本人と家族で育てるのが1番ですが…」
四「家庭環境を考えると、厳しいんじゃないの？」
向「その場合は乳児院に預けるか、あるいは第三の道も検討してはどうかと」
今「それについては私から」

今橋は手元に置いていた冊子を右側に、向井が同じ冊子を左側に回す。

今「民間の養子斡旋団体です」

今橋達から回された冊子には｢NPO法人 ツグミの会｣と書かれていた。

今「今回は、選択肢のひとつとして特別養子縁組も視野に入れてはどうでしょうか？」
向「ご存知だと思いますが、特別養子縁組は実の親が養育できない6歳未満の子供に育ての親を見つけてあげる制度です。子供は、法律上も家庭環境的にも、新しい父母と実の親子と同じ関係が作れます」
新「でもリスクもありますよね？」

向井の説明に新井が疑問をぶつける。

向「えぇ。法的に実子（じっし）扱いとなると、地域の福祉の目が届きません。あくまで最悪の想定ですが、家庭という閉じた空間の中で、虐待が起きる事も…」
福「無いとは言えませんね…」
向「ただ、家庭裁判所が養子縁組の決定を降す前に、6ヶ月間の試験養育期間を設けていますので」
今「そこで、ある程度は養父母の親としての適性を判断できますね」
向「それまでは、私もちゃんと関わっていくつもりです」
今「翠原先生は、担当医としてどう考えますか？」
『私は、赤ちゃんとお母さんのために、あらゆる可能性を検討するべきだと思います』