CGアニメ

優香は早速、受診に来た玲奈を4Dエコーで診察する。診察室には、玲奈の付き添いとして母親の昌美、そして念の為に鴻鳥と下屋、小松も揃っている。

『吉沢さん、赤ちゃん元気ですよ』
鴻「あ、指しゃぶってるね」
玲「へぇー…なんだかCGアニメみたい」
『………』
鴻「………」

診察エコーを終え、玲奈は母の隣に座り、優香は表情を変えないままその正面に着く。

昌「先生…」
『はい』
昌「予定日通り産まれるんでしょうか？」
鴻「えっ？」
『……』
昌「私の病気治療という事にして仕事を休んでこの子にも学校を休ませてるもんですから…」
『あの、予定日というのはあくまで目あすで、その日に産まれてくるとは限りません』
玲「2ヶ月後にバスケの大会があるんです。それまでに産んじゃえば、私出られますよね？」

玲奈の発言にその場は戸惑い、昌美が咎める。

『…その前にまず、無事に産む為の話をしましょうか。
あなたの歳では、まだホルモンバランスが整ってないし、骨盤の発達も不十分です。
状況によっては、お腹を───…』
玲「あっ！陣痛ってものすごく痛いですか？」
『………。
(この子、母親の自覚がまだないわね。それ以前に人の話を聞く気あるわけ？自分自身の事なのに…)』

玲奈が優香の説明を遮ってまで聞いてきた質問に対し、優香は唖然とする。

小「大丈夫。私が、呼吸法をしっかり指導するから」
玲「麻酔打って貰えますよね？」
鴻･下･小「ん？」
『………』
玲「ネットで検索したら、麻酔使えば痛くないって」

玲奈の言葉に4人は言葉を失う。優香は無表情のまま言葉を続ける。

『うちの病院ではどうしても必要な時以外、妊婦さんが希望したからと言って麻酔は使いませんよ』
玲「なんだ…ダメなのか…」

優香の言葉に玲奈は気落ちする。

鴻「吉沢さん、君のお腹にいるのは作り物のCGじゃない。新しい命が宿ってるんだよ」
玲「……はい…」
下「………」
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玲奈の診察を終えた優香は、鴻鳥、今橋、メディカルソーシャルワーカーの向井祥子も交えて、玲奈の母の昌美と話していた。

向「それじゃあ、赤ちゃんをどこで育てるかまだ決まっていないんですか？」
昌「実家の母に預けるはずだったんですけど、糖尿が悪化して…母が入院する事になってしまって。
これからは、介護の事も考えていかないと…」
鴻･今「『………』」
向「ご主人とは、離婚されたんでしたね？」
昌「別れてから8年間、音信不通です」
今「赤ちゃんのお父さんは？元倉さんのご家族とは話し合われましたか？」
昌「あちらは、息子さんの将来が第一で。出産費用や生活費は援助するけど、赤ちゃんの事はこちらに任せたいって」

昌美から聞かされた言葉に医師の3人は言葉を無くす。

向「それはちょっと勝手すぎますね…」
昌「でも、女親が傍にいながら妊娠に気づかない方がおかしいって責められると…返す言葉がなくて…」
『お母さんが育てる事は考えられました？』
昌「もちろん考えました…！でも…手一杯なんです。
お恥ずかしい話なんですけど、暮らしていくのがやっとで…。私の持病もありますし。この上、赤ちゃんを育てるなんて…」
向「お母さん、1人で抱え込まないでくださいね？私達が、一緒に考えますから」
鴻「『………』」