14歳の妊婦

その日、産婦人科にとある妊婦が受診しに来た。その妊婦は、まだ14歳の少女だった。
院長の大澤の元に連絡が入り、産科医の鴻鳥、四宮、優香と新生児科医の今橋が呼び出され、院長室で話を聞く。

今「…中学2年生ですか…」
大「そう。相手も14歳、同級生だって」
鴻「今、何週ですか？」
大「もう8ヶ月だって言うの」
鴻「8ヶ月？！」
四「まさか、8ヶ月も気づかなかったって言うんじゃないでしょうね？」
大「そのまさかだよ。
家族はもちろん、本人も気づかずにバスケットの練習してたって言うんだから。驚くよねぇ」
『嘘でしょ…？』

大澤の話に驚き絶句する。

大「お母さんと2人でこっち出てきて、今ウィークリーマンションで暮らしてるんだよ。
ほら、地元だと周囲に気づかれずに産むの難しいから。表沙汰になったら、若い2人の将来もねぇ…」
今「確かご友人の元倉さん、県会議員をされているんでしたね？」
大「…あれ？そんな話したっけ？」
今「はい。ゴルフのスコア自慢のついでに」

今橋の言葉に大澤は思わず口を閉ざす。

四「遠くの病院でこっそり産ませて内密に…という事ですか」

四宮の言葉が図星だったのか、大澤は態とらしく咳払いをする。

鴻「14歳ですか…。まだ身体も出来上がってないですし、難しいお産になりそうですね」
大「そう！そこなんだよ。
ハイリスクだからこそ、地域周産期センターで受け入れるべきでしょ？」

鴻鳥の言葉に大澤は大きく頷き、｢ねぇ？今橋先生｣と同意を求める。今橋は苦笑するしかなかった。
話を終え、4人は院長室を退室する。

四「なんだか、言いくるめられた様ですけど？」
今「院長の事だから、元倉さんにもうOK出してるよ」
鴻「どうするつもりなんでしょう？」
今「ん？」
鴻「14歳の母親が、どうやって育てていくのか…」

鴻鳥の言葉に3人は押し黙る。

『とりあえず、妊婦と言えどもまだ14歳の思春期の少女ですから、今回は私に担当させてください』
鴻「はい。よろしくお願いします、翠原先生」

そして、大澤に紹介された14歳の妊婦・吉沢玲奈は、優香が担当する事となった。