第1話 不幸を招く猫

営業時間が終わった。皿を洗ってくれた霊たちも全員帰ったようだ。
久々の忙しい1日。俺は真虫の隣に座り、ふーっと息を吐いた。
「真虫。色々ありがとな。店の手伝いまでさせちまったから、代金は後でちゃんと渡す。」
真虫は目を丸くした。
「道具に代金はいりませんよ?」
俺は一瞬固まった。
『自分は道具』。『自分が生命だと実感するのが苦痛』。
これらの言葉にどれほどの闇が隠されているのか、今は触れないことにした。
代わりに、真虫の肩をポンと叩いた。
「”合法で もらえるもんは もらっとけ”
ドケチ心の俳句だ。」
「季語が入っていないので川柳では……?」
「細けえことはいいんだよ。
それより、1つ問題が発生した。
霊のお客が全員帰ったかの判断がアンタにしかできない。
もし良ければ……。」
俺は真虫をまっすぐ見つめた。
「これからも俺に協力してくれないか?」
真虫は一瞬動揺し、深々と頭を下げた。口角は自然と上がっていた。
「喜んで。」

俺の店に招かれたのは、不幸だけではなかった。誰よりもうさん臭く、誰よりも愉快な、新しい従業員だった。
6/6ページ
スキ