FF編

「4000円もしなかったか。よかったよかった。」
お小遣いが命の中学生にとって本は高価なものだ。予定よりも安く済んで光は安心した。

「おい!」
「あ、さっきの、、どうしたんだよ佐久間。」

本屋を出た時、入り口に立っていた佐久間が光を呼び止めた。どこかそわそわしながらカバンから何かを取り出す。

「、、、っこれやるよ。俺はもう必要ないから、今日買い取ってもらおうと思ってたけど、お前サッカーについてこれから勉強し始めるんだろ?
この本俺もサッカーやり始めた頃に読んでたやつだからわかりやすいはずだ。、、、、、、いらなかったら別にいぃ、、、。」

どこか照れくさそうに目を逸らしながらよく読み込まれたことがわかる本を差し出す。

「っ!!いいのか?!え、ほんとうに?嬉しいよ、ありがとう佐久間!!!」

最初は突然のことできょとんとしていた光だがすぐに満面の笑みを浮かべ片手で本を受け取り、もう片方の手で佐久間の手を取りブンブンと上下させる。

「っな!おい勝手に手を取るな!、、、そんな大したことはしてない。」
「ははっ、ごめんごめん。でも本当にいいのか?だいぶ年季の入った本だ、大切なものじゃ、、、。」
「ふんっ、だから元々売るつもりだったと言ってるだろ。それにこの本だってまた使われた方が嬉しいはずさ。」
「なら、遠慮なく貰い受けよう。、、、そうだ!お礼をさせてくれ。この後時間あるか?」
「はぁっ?!お礼なんかいらん!、、、おいっ引っ張るな!!」
「まぁまぁ、私の気がそれじゃ済まないんだ。少し先にカフェがあるんだ。奢らせてくれ。」

光は何かしてもらったら何か返さないと気が済まない性分だった。割と強引に佐久間の腕を引っ張り道を歩く。
佐久間はしばらく騒いでいたが、もう諦めたようで大人しく横をついて歩くようになった。
お互い落ち着き、元々相性が良かったのか会話は思いのほか弾んでいた。

「ふーん、お前サッカー部どころか部活に入ってないのか。もったいない。」 
「あぁ、今まではな。これといってやりたいスポーツとかなくて、いろんな人たちの助けになれるのが嬉しくて助っ人という形でいろんな部活に参加してたんだ。これでも色々賞を取ってるんだぞ?」
「まぁ、あの運動神経なら納得だな。今まではということはやっぱりサッカー部に入るのか?」
「今すぐにでも入りたいがまずは勉強してからかな。本当に何も知らないから。」

そう言って本が入った紙袋を揺らす。それを見て佐久間は何か考え込む。

「、、、行き先変更だ。」
「へっ?」
「少し歩くが俺の家へ来い。サッカーについて教えてやる。、、、時間はあるんだろ?」

そう言って意地悪そうに笑い光の腕を掴む。先ほどと立場が逆転した。

「ちょっ、お礼のカフェは?!」
「俺の家で勉強することが俺へのお礼だと思ってくれて構わない。」
「なんだそれっ無茶苦茶な?!」
「くくっ、間抜けヅラ。」

佐久間は慌てる光を見て年相応に笑う。それは帝国の佐久間じゃなくただの佐久間次郎としての笑みだった。






「ほら、着いたぞ。今は親は2人ともいないから気にせず入ってくれ。」
「お、おじゃまします。」

流されるままに佐久間の家に着いてしまった、、、。
高級住宅街に差し掛かった時から予感はしていたが、やはり佐久間本人もなかなか良い家に住んでいる。光は自分たちの家の2倍はあるであろう玄関に少したじろいだ。
というか、そもそも光は円堂と風丸以外の他人の家に行くのが初めてでありなんともむず痒い気持ちがしたのだ。
少し意外だが、人気者である光は助っ人として忙しくしている反面、特定の友達と遊ぶという経験はあまりなかった。
今回がその『遊ぶ』に入るかはわからないが、なんだか新鮮で光はワクワクしている。

「なーに、ニヤニヤしてんだ。さっさと上へ上がるぞ。俺の部屋で勉強しよう。」
「むっ、、、ニヤニヤしてないっ。」
「はいはい。」

佐久間は光の扱い方がわかってきたのか肩を叩き適当にあしらう。こんな態度は両親と幼なじみ以外からはされたことがないので本当に新鮮だった。
話したばかりだが、佐久間との会話に苦がないのは光も感じている。

「へぇー、綺麗に整頓されてるな。」
「まぁな。よし本を出せ白峰。俺が一からサッカーというものを教えてやる。」
「はーい。お願いします先生!」

ローテーブルに本を広げ2人で囲む。
これが、帝国と雷門、出会ったばかりの2人が定期的に勉強会を開くようになったきっかけである。


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