FF編

やはりと言うべきか、光は河川敷に皆よりも遅く着いてしまった。
光は上がった息を整えながら下にあるサッカーコートを見下ろす。コートでは風丸を先頭に皆はランニングをしていた。それを眺める位置で芝生に横になり会話をしている円堂と染岡が近くにいるのに気づく。

「羨ましかったんだよ、俺。」
「何が?」
「豪炎寺だよ。あいつ出てきただけでなんかオーラが違ったんだよな。1年生があいつを呼んでくれっていうのもわかる。
、、、それにあの白峰光とかいう奴もだ。あれは結局不正扱いで点にはならなかったけどあいつは1人で帝国の奴らと渡り合ってた。バケモンってこーゆーやつなんだなって俺あの時思ったよ。」
「、、、、、、。」

光は染岡がそう円堂に話しているのを聞いた。

「(バケモノ、、、か。なつかしいなその呼び方。)」
久々にそう呼ばれた事に光は懐かしそうに目を細める。別に、良い意味で呼ばれていたわけではない。ただ、光に一生モノの出会いをもたらしてくれたから。だから光は少しだけその自分の呼び名を気に入っていた。

「あいつらがシュート決めた時、あれが俺だったらなって、今でも思うんだよ。あいつらには負けたくない。俺だってあんなシュートを打てるようになりたいんだ。」
「、、、そっか。よしっ!お前のシュート完成させようぜ、そいつで尾刈斗中に勝つんだ!」

円堂は起き上がり落ち込む染岡の肩を叩く。染岡は簡単に言うなと反論するが、円堂は持ち前の明るさで染岡を鼓舞している。

やっぱり守はすごいな。いつまでも突っ立ってるわけにもいかないし、そろそろ話しかけるか。

「へぇー〜?びびってるんだ染岡。」
「っなに?!、、、てめぇ、盗み聞きかよ。」
「光!どこいってたんだ、心配したぞ。」
「ごめんごめん、ちょっと色々あってね。それより、盗み聞きとは人聞きが悪いな。私の話してたんだから聞くに決まってんじゃんか。」
「っけ、、、、聞いてたんなら話は早え。おい白峰、俺に必殺技を教えろ。」

そう言って染岡はどこか悔しそうに目線を逸らしながら光にお願いをする。
光は意外なお願いにキョトンとするがすぐにそれは冷や汗混じりの苦笑へと変わる。

「ごめんっそれ無理だ!」
「なに?!なんでだよふざけんな。俺みたいなやつには教えたくないってか?!」
「違う違う!そうじゃなくて私、この前の試合で初めてサッカーやったから。友達にもドリブルがまだまだだって言われてるし、基礎を練習したいんだよ。
それに、えっー、、、とひっさつわざ?ってやつ私あの時できてたらしいけどあんまり記憶なくてさ、やり方忘れちまった!!あはは〜。」

光が目線を上げると染岡と円堂は顎が外れそうなほどに口を開いて呆然としていた。

あちゃ〜、、、部室の時も思ったけど、期待させちゃってたかな。素人よりは力になれると思うけど豪炎寺や守みたいな必殺技をできる気がまだしないんだよなー、、、。

光は未だ愕然としている2人をおいて1人で思考に耽る。
やはり、光の目下の目標はサッカーの基礎を固めることだ。佐久間に少し見てもらったが彼はその時上達スピードが尋常じゃないと少し悔しそうにしながら驚いていた。この調子なら次の試合までにはなんとか戦えるくらいにはなっているはずだ。
染岡の必殺技に関してはサッカー初心者の自分じゃあまり力になれないだろう。ここは守に任せておいた方がよさそうだな。

「はあああぁぁぁっっ?!?!」
「うわうるさっ。」

染岡の叫び声で光は思考を中断させられた。
にしてもそんなに驚くことかね。守もなんで驚いてんだ。

「ひ、光お前、あのかっこいいシュートもう打てないのか、、、?」
「うーん、、、あん時の感覚を思い出せないんだよなぁ。怒りで頭真っ白だったし、あはは。
、、、、、、おいそんな涙目になる程か?!」
「だって〜、俺光のあのシュート本当にかっこよくて綺麗で好きなんだよ。」

円堂は子犬のような顔で涙ぐみながら話す。
くっ、かわいい、、、、、、。
円堂のこういうところが本当にずるいなと光は常々思うが無理なものは無理である。

「まぁまぁ、ほら練習するぞー。、、、染岡、」
「んだよ。」
「私はお前ならとんでもない必殺技を完成させれるって、確信してる。さっきのお前の目の中にある闘争心を見て絶対に何かを成し遂げるって思ったよ。
、、、だから諦めるな。お前は私でも豪炎寺でもない。染岡竜吾なんだ。お前はお前のサッカーをやれ。私はそれが見たいよ。」
「、、、、、、っ!」

そう言って光は風丸達の元へと合流する。
一郎太にはやはり叱られてしまった上に、なんだか一年生にビビられてる気がしなくもないがこれから仲良くなれるだろうか。




「なぁ、染岡。俺の幼なじみ、いーやつだろ?」

円堂は光を見つめながらそう自慢げに話す。その表情は長い付き合いの染岡もあまり見たことがない程得意げで、悪戯っ子のような珍しいものだった。

「、、、まぁ、そうだな。、、、はぁ余計情けないな俺はよ。うしっ、俺も必殺シュート完成させてやるぜ!!!円堂、手伝ってくれよ。」
「あぁ、もちろん!いくらでも付き合うぜ!!」

先ほどの光の言葉は染岡の心に響いて、やる気をみなぎらせる。最初は嫌なやつだと思っていたのが、今はどこかからっとしていて清々しく、既に好印象を抱いていた。
素直に認めるのは癪なので濁したが、染岡は円堂の言葉に同意する。

「じゃあ、まずはよ!俺が思いっきりシュート打ちまくるからゴール前で止めてくれ!早く行くぞ円堂!」
「あ、ちょっとまて染岡。これだけ言わせてくれ。」
「なんだよ、今のは勢いでそのままいくところだろーが!、、、本当に何だよ。」

珍しく勢いに乗らなかった円堂に、染岡はツッコむが、円堂の顔を見て冷や汗をかく。
その顔は別に無表情とか眉が吊り上がってたとかではない、いつも通りの円堂らしい笑顔だった。ただ、とてつもない圧が感じられた。



「さっき光のことバケモノって言ってたやつ。二度と言わないでくれよな。、、、な?」
「、、、、、、はい。」

サッカー部に入って初めて、円堂が怖いと思ったと後の染岡は語る。
12/14ページ
スキ