FF編

「えっ、ちょっとあれ白峰先輩じゃない?!」
「うっそ!ほんとだ。生で見れるのやば〜!」

帝国との試合から4日が経った昼休み、2年生の校舎の廊下はザワついていた。

「あれ〜守のやつ教室にいないな。」
「白峰せんぱ〜〜い!!どうしたんですか?」
「ん?つくしちゃん!久しぶりだなぁ。守を探してるんだけど知らないか?」

円堂のクラスの教室を見ても、おらず光は話しかけてきた大谷つくしに居場所を尋ねる。
ちなみに大谷とは円堂つながりで知り合った。光を純粋に先輩として慕ってくれる可愛い後輩である。

「円堂くんなら確か雷門さんに呼び出されてましたよ?サッカー部関連のことで。たぶん部室にサッカー部員が集まってるんじゃないですかね?」
「そっか!むしろちょうどいいな。ありがとうつくしちゃん!行ってくる。」
「えへへ。行ってらっしゃーい!」

そういって大谷の頭を撫で爽やかな笑顔で去っていく。そんなつくしを周りのクラスメイトは羨ましそうに見ていた。



「次の対戦校が決まったわ。尾刈斗中、試合は1週間後よ。この試合に負けたらサッカー部は直ちに廃部。ただし、勝利すればフットボールフロンティアへの参加を認めましょう。」
「〜〜〜〜っ!!本当か?!?!」

部室にて生徒会長、雷門夏未が告げた内容に雷門メンバーは盛り上がる。フットボールフロンティアは彼らの憧れだったのだ。嬉しくなるのは分かるが、廃部という言葉を聞いていなかったのだろうか。
夏未は呆れながらも仕事は終えたと踵を返した。

「ふんっ、せいぜい頑張ることね。!きゃっ」
「おっと、ごめん。大丈夫か?」

背後にいたのは部室を訪れた光だった。まさか真後ろに人がいるとは思わず、夏未は驚きバランスを崩す。光は咄嗟に左手で夏未の腰を支えた。
まるでそこだけがおとぎ話のワンシーンのようで周囲の人々は口をあんぐりと開け見蕩れる。
先に我に返ったのは夏未だった。

「っ!黙って人の後ろに立たないでちょうだい。危ないじゃない。」
「うん。ごめんな?えっと、確か生徒会長の雷門さんだったよな。サッカー部に何の用だったんだ?」
「貴方には関係の無いことよ。というか、いつまで私を支えてるつもり?いい加減離しなさい。」
「わかったわかった。、、、、これから、無関係じゃなくなるかもしれないぞ?」
「、、なんですって?」

光はニヤリとそう言ってズカズカと部室に入る。そのまま円堂の前まで歩き1枚の紙を突き出した。

「一緒にサッカーやろう。守!!」
「、、、、にゅう、ぶ、とどけ。、、、、ほ、本当か?!?本当にサッカー部に入ってくれるのか?!光!!」
「ばぁ〜か。これが偽物に見えるのか?」
「!!!!!っっ〜〜〜〜〜!!!」

光がサッカー部に入部することを知り円堂は声にならない叫びをあげた。よく見ると目じりに涙を溜めている。
そのままの勢いで光に抱きつきグリグリと頭を嬉しそうに擦り付けた。

「ちょっと守、くすぐったいなこら。は、ははは!そーんなに嬉しいか?」
「ぅん!!うん!!!!!だってさだってさ、今まで光どんだけ誘ってもサッカー一緒にやってくれなかったからさ!メッッチャクチャ嬉しい!!!、、グスッ」

「まるで犬みたいでやんすね。」
「というか、円堂のやつ泣いてないか?」
「マ、マネージャー?!しっかりしてください!」
「壁山くん?!貴方も一体どうしたんですか!」

光が入部するとなり、周りは収拾がつかなくなるほど騒がしくなった。
円堂は耳と尻尾の幻覚が見えるほど、まるで犬みたいに光に引っ付いて離れない。
周りはそんな珍しい円堂に驚いてるし、木野と壁山が何故か放心し、必死で呼びかける声も飛び交う。とてもカオスな空間が出来上がった。
すでに夏未は部室から姿を消している。

「よかったな、円堂。あと光が苦しそうだ。いい加減離してやれ。」

見かねた風丸が円堂へ声をかける。

「グスッ風丸、、。ごめん光、嬉しすぎて思わず抱きついちまった。」
「いいよいいよ。私の事それだけ歓迎してくれたのに嬉しくないわけがないよ。」

「珍しーキャプテンが見れた♪練習試合は決まるし、ウワサの光先輩はサッカー部がゲットしたし、飽きなくてうれしーね。」

落ち着いてきた3人のところにボーダーの帽子を深く被った少年が話しかける。

「マックスお前あんまり円堂をからかうなよ?」
「えぇ〜キャプテンのあんな姿めちゃくちゃレアだからしょうがなくない?」
「まっくす?」
「おっ、そうそう自己紹介がまだだったね。ボク松野空介、帝国戦前にスカウトされた2年生でーす。あの光先輩とサッカーできるなんてみんなに自慢できるね。
ボクのことはみんなマックスって呼ぶんだ。光先輩もぜひ呼んでくださーい。」
「へー、元々部員じゃなかったんだ。よろしくマックス!自慢になるかは分からないけどな、、。」
「いや!白峰先輩ならちょーーーー強力なストライカーになれるでやんすよ!」
「そうですよ、なんてったあの帝国に非公式とはいえ1点決めたのですからね!」

松野をかわきりに、続々と他の部員集まり始める。彼らは先日の帝国戦の後、あの乱入者が白峰光だと知り驚愕した。
雷門の生徒なら知らない人はいないほどの有名人だ。そんな人が入部してくれるなんて他の奴らが羨むだろう。一気に光の周りが賑やかになる。

そんな彼らを見て1人、納得のいかなさそうな顔をしている男がいた。
彼は1人部室の隅の椅子に座り光を睨みつけている。

「っけ、、、んだよ。そいつは呼ばれてもいない試合に勝手にでた、ただの目立ちたがり屋じゃねぇか。そんなやつがストライカーだ?ふざけんじゃねぇ!!」

叫んだ男、染岡竜吾は不満だった。

今まで雷門中サッカー部のエースストライカーは俺だったはずだ。なのにあの豪炎寺といいこの白峰とかいう女といい、急に現れその立場を掻っ攫いやがった。

染岡は許せなかったし悔しかった。だから光に強く当たってしまった。

「ふーん、お前名前は?」
「、、、、染岡竜吾。」

そんな染岡に光は強い関心を抱く。その光の目をみて隣にいた風丸と円堂は嫌な予感がした。

「円堂から少し聞いてたけど、今までのサッカー部、円堂以外のメンバーは練習に乗り気じゃなかったらしいじゃないか。練習の場が確保できないから?そんなの家でだってリフティングの練習くらいできるのにはなから諦めてたってことだよな?
今まで練習も本気でしなかった奴が『俺がストライカーだ。気に食わねぇ。』みたいな顔一丁前にしてるんじゃないよ。私や周りに八つ当たりする前にまずは自分の基礎から見直してみな。」

光の口から出たのはとんでもない毒である。周囲は呆然と固まり、風丸と円堂はあちゃ〜と片手で顔を覆う。
幼なじみ達は知っていた。光は手を出す癖が目立っていたが、1番厄介なのはキレたら止まらないこの口だと。
染岡は女子にここまで言われたことが無かったのか、図星だったのかなにも言い返さずに光をただ見つめ返していた。

「、、、はぁ、まぁいいや。おい守。どうせこの後河川敷で練習するんだろ?先に行って場所確保してくる。あとは任せた。」
「っえ、あ、あぁ。さんきゅー光。」

ため息をついて光はそう言い、そのまま部室から出ていく。声をかけられた円堂は止める間もなく去っていく光に少し驚いた。

あれ、いつもならもっと相手に強く言ってるイメージなんだけどなぁ。、、、もしかして光のやつ怒ってるわけじゃないのか?

「どちらかというとあれは喝を入れたって感じがするな。」

円堂が考えていることがわかったのか風丸がそう言う。

「かつ?」
「あぁ、染岡だけじゃない。あれは他のメンバーに対しても言っていたんだ。、、、見てみろ。」

確かに他の半田や宍戸、壁山、栗松、少林という初期のメンバーもどこか暗い表情で考え込んでいた。
帝国との試合が決まってからあんなに練習したのは初めてなほど、毎日毎日泥だらけになってサッカーをした。
確かに最初は練習もたくさんしていたが、サッカー部の肩身が狭い状況は変わらず段々と練習に身が入らなくなっていった。
それからの自分達は円堂の声かけにまるで応じず、部室でダラダラと過ごしていた。
帝国が棄権したことで形的には勝利となり次の試合も決まったが、また光がシュートを決めてくれるとどこかで甘え自分達は強いと錯覚していた。自分達が強くならないと意味がないのだ。
たった数週間の練習で調子に乗るな。そう暗に光に言われたとわかった彼らは暗い表情をしている。

「おい円堂、どうするんだこれ。」
「、、、光はあとは任せたって言ってた。つまり喝を入れた後は俺がみんなを引っ張れってやれってことなんだ。
みんな!!!光の言う通り、俺たちは基礎がまだまだだ。でも、基礎を鍛えればチーム全体が強くなって必殺技だって自ずと完成される!俺のゴッドハンドだって毎日の練習があったからできたんだ。みんなにだってできるはずだ!
よしみんな、ボールを持って河川敷に行こう!光が待ってる。たくさん練習して尾刈斗中に勝つんだ!そして、フットボールフロンティアにみんなで出場するんだ!!!」
「キャプテン、、、。」
「円堂、、、そうだな。みんな、こんなところで暗い顔してたら光のやつ今度こそ怒りかねないぞ。あいつ怒ると本当に怖いからな。」

風丸は冗談っぽく場を明るくするようにさらに声をかけた。

「そ、そうみたいでやんすね、、、。よしすぐ向かうでやんす!」
「白峰先輩にぎゃふんと言わせてやりますよ!」

円堂の声掛けで雰囲気が変わった。キャプテンとしての円堂を信頼したから光はあとを託したのだ。風丸は円堂は一声で皆の士気を上げた円堂をやはりすごいやつだと思った。

よし、俺も行かなきゃな。まだまだサッカーは初心者なんだ。早くみんなに追いつかないと。

風丸は自分のバッグを取り、皆に続いて河川敷へと向かった。彼らの頭はもうサッカーのことでいっぱいだった。
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