第三章 綻びの足音
筆を置いて、スケッチしたものとモデルになった校舎を交互に見比べる。
がくり、と肩を落とす。
写生した絵は、お世辞にもあまり上手くなかった。
(ダメだ。私に、絵心はないな)
自分で思ったことに、自分で落ち込んだ。
落ち込みながら、道具を片づけた。
最後のひと塗りを終えて、絵を完成させた。
仕上げた者から授業を上がってよかったので、ベンチから立ち、校舎に向かう。
歩きながら、校舎の外面に取り付けられている時計に目をやる。
時計の針は授業終了時間、十五分前を差していた。
思ったより、早く終わった。
自分の絵心のなさに落胆しながら校舎に戻る途中に、金髪の少年を目の端で捉える。
校舎玄関前の階段を下りた所、脇にあるベンチに腰かけて、真剣な顔でスケッチブックに筆を走らせている。
「猫沢君」
なんとなく気になり、彼に声をかけてみた。
「あ、春日さん」
声をかけられ、横を向いた螢斗はふんわり柔らかい笑みを作る。
「ちょっと、見せてもらってもいい?」
「どうぞ」
螢斗は快くスケッチブックを、珠紀に差し出す。
珠紀は、受け取ったスケッチブックを見て驚く。
そこに描かれていた絵は、プロ並のスケッチだった。
自分の物とは、比べ物にならない絵画だ。
いや──比べること自体失礼だろう。
「すごい。猫沢君、絵上手なんだね!」
「そんなことないよ」
がくり、と肩を落とす。
写生した絵は、お世辞にもあまり上手くなかった。
(ダメだ。私に、絵心はないな)
自分で思ったことに、自分で落ち込んだ。
落ち込みながら、道具を片づけた。
最後のひと塗りを終えて、絵を完成させた。
仕上げた者から授業を上がってよかったので、ベンチから立ち、校舎に向かう。
歩きながら、校舎の外面に取り付けられている時計に目をやる。
時計の針は授業終了時間、十五分前を差していた。
思ったより、早く終わった。
自分の絵心のなさに落胆しながら校舎に戻る途中に、金髪の少年を目の端で捉える。
校舎玄関前の階段を下りた所、脇にあるベンチに腰かけて、真剣な顔でスケッチブックに筆を走らせている。
「猫沢君」
なんとなく気になり、彼に声をかけてみた。
「あ、春日さん」
声をかけられ、横を向いた螢斗はふんわり柔らかい笑みを作る。
「ちょっと、見せてもらってもいい?」
「どうぞ」
螢斗は快くスケッチブックを、珠紀に差し出す。
珠紀は、受け取ったスケッチブックを見て驚く。
そこに描かれていた絵は、プロ並のスケッチだった。
自分の物とは、比べ物にならない絵画だ。
いや──比べること自体失礼だろう。
「すごい。猫沢君、絵上手なんだね!」
「そんなことないよ」
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