序章 千年の始まり

 常世神はその怒りと悲しみを自らの血に刻み、渡来のカミたちを殺し尽くすための力を求めた。
『男は一人の女に近づいた。その女の名は、玉依姫。世界を終わらせる力を管理するカミ』
 剣と、それを管理する玉依姫の力を。
『間もなく二人は親しくなり、契りを交わした。
 ある時、男は玉依姫に言った。
 玉依姫、私に剣を貸してくれ。どうしてもそれが必要だ。
 なにに使うのですか。この力は、破滅しか……。
 そんなことなどどうでもよいのだ! どうしても、それがいる!
 男の中の深い悲しみを読み取った玉依姫は、男が封印された力を得るために自分に近づいたのだと知る。それでも、男を愛する気持ちは微塵も変わらなかった。
 玉依姫はその感情を抑えることができず、それで男が幸せになるならと、男に剣を貸し与えた』
 それが、どんな悲劇を招くことになるかも知らずに。
『男はその力で、多くのカミを殺していく。
 それは壮絶な戦い。世界は暗闇と絶望に包まれた。
 玉依姫は泣きながら訴えた。
 貴方様がなさっていることは、自分がされたことと同じではありませんか。不幸を撒き散らして、貴方様はそこになにを見出だすのです。
 玉依姫は嘆願し、男はやがて、その訴えに耳を傾けた。
 利用されていたと知りながらも、玉依姫には男への深い思慕しかなかったから。
 恐ろしい力はしかし、男自身をも蝕んでいく。
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