第三章 綻びの足音

 彼は、はあっとため息が出た。

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 珠紀は走る。走る。ただひたすら。
 右も左もわからない、どこまでも続く闇の中を走る。
 息切れで心臓が悲鳴を上げようとも。
 脚が棒になろうとも。
 走り続ける。
 追ってくる。背後から。
 青と鳶色の色違いの瞳が。
 ずっと、こっちを見ている。
 ただ、見ている。
 逃げると追いかけてくる。
 どこまでも。どこまでも。
 最近、見はじめた夢。
 夢の中を、珠紀は走り続けた。

🍁

(どうしよう……)
 朝の清々しさとは対照的に、珠紀はどんよりしていた。
 原因は、拓磨との間に流れるこの空気だ。
 金曜日の学校の帰り道、あんなことがあったから一緒に登校はできないと思っていた。
 が。朝、拓磨はいつもと変わらず迎えに来てくれた。
 あんなことがあったため、拓磨はばつの悪い顔をしていた。
 だが、珠紀の目にはその顔がいつもの倍も無愛想な顔に見えていた。
 朝の挨拶は交わしたが、それきり口が閉じ会話がない。
 拓磨の方も口を閉じ、黙りしている。
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