第三章 綻びの足音
古い黒い錠前をかけ、三毛猫を胸に抱き抱えた珠紀は母家に向かう。
「今日、なにしようかな……」
考えながらぽつりと呟く。
「ミャー」
その呟きに、三毛猫は返事するように鳴いた。
「うんうん。君はねこまんまね」
珠紀は歩きながら、三毛猫の声に答えた。
本当、なにをしようと夕飯の献立を考える。
途中、そんなやり取りがありながら歩みを進めた。
──惜しい。
彼は、小さく落胆する。
すっと自身の意識を戻して、閉じていた目をゆっくり開ける。
窓枠に頬杖を突いて、小さく息をつく。
そのまま、窓の外の庭に顔を向ける。
先ほどまで彼はあるものに意識を移し、あるものの目を通じて、玉依姫 の情報を得ていた。
他者に意識を移すのは、彼の得意とする術の一つだ。
あるものを送り込んでから、その者の目を通じて彼女の情報を得ていた。
懸命に掃除をする彼女は、かわいかったこと。
庭に顔を向けたまま、片方の口の端を上げる。
彼の機嫌のよさは、後ろで控えていた彼女にも伝わってきた。
──だが……。
上げていた口の端を下げる。
その予兆は見られるが、それからまったく。
──上手く、いかないものだな。
「今日、なにしようかな……」
考えながらぽつりと呟く。
「ミャー」
その呟きに、三毛猫は返事するように鳴いた。
「うんうん。君はねこまんまね」
珠紀は歩きながら、三毛猫の声に答えた。
本当、なにをしようと夕飯の献立を考える。
途中、そんなやり取りがありながら歩みを進めた。
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──惜しい。
彼は、小さく落胆する。
すっと自身の意識を戻して、閉じていた目をゆっくり開ける。
窓枠に頬杖を突いて、小さく息をつく。
そのまま、窓の外の庭に顔を向ける。
先ほどまで彼はあるものに意識を移し、あるものの目を通じて、
他者に意識を移すのは、彼の得意とする術の一つだ。
あるものを送り込んでから、その者の目を通じて彼女の情報を得ていた。
懸命に掃除をする彼女は、かわいかったこと。
庭に顔を向けたまま、片方の口の端を上げる。
彼の機嫌のよさは、後ろで控えていた彼女にも伝わってきた。
──だが……。
上げていた口の端を下げる。
その予兆は見られるが、それからまったく。
──上手く、いかないものだな。