第二章 ゲームのはじまり

 珠紀は弱々しく懇願するが、その懇願が聞こえていないのか拓磨は、彼女を引っ張って黙って歩き続ける。
 二人は学校を出て、宇賀谷家に続く村道を歩いていた。
 学校を出る前から珠紀は拓磨に放してと懇願したが、聞き入れてもらえなかった。それどころか、手首を握る力が強くなる。
 握られた手首が熱を持ったように熱く、痛い。
 スタスタと速い歩調とテンポで拓磨の後ろを歩き、珠紀はなんとか付いて歩く。
 拓磨の歩く速度が速く、躓きそうになりながらも珠紀も動かす脚を速め、彼に合わせ必死に後ろで手を引かれる形で歩いた。
 ほぼ、歩かされていると言う方が近い。
 珠紀は拓磨を背後からそっと盗み見る。
 前を向いているため、当然表情は窺い知れない。が、怒ってることは気配でわかる。だが、なぜ怒っているのか、珠紀には理由がわからなかった。
 脳内で、あれこれ思い出してみるがわからない。
(気づかないうちに、怒らすこと、した、かな? でも、忘れ物取りに行く前は普通だったよね?)
 そう。行く前は普通だったはず。一体、行く前と後ではなにが違うのだろう。
(やっぱり、待たせたのがいけなかった? 聞いたら、答えてくれるかな?)
 そう思ったが、今はなにを聞いても答えてくれない雰囲気で、口に出さなかった。
 するとさらに、手首を掴む手に力が入る。
 あまりの痛さに、珠紀は顔を歪めた。
「いた……っ」
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