序章 千年の始まり

 いずれも決着のつかぬと見ると、カミたちは互いに停戦を申し入れる。
 中立のカミの中から一人を選び、剣の管理者とした。
 それは海神わたつみのカミの娘であった。その無垢な娘は自分の血と剣を結びつけ、剣の力を永久に封じた。その名は──玉依姫命』
 海の神の娘──玉依姫命。
 永遠に、剣の管理と封印を宿命づけれた者──。
 玉依姫が剣の管理を始めてから、神代に平穏が戻った。
 だが、しばらくしてから、その平穏の世を渡来のカミが破る。渡来のカミたちが自分たちの正当性を一方的に主張しはじめたのだ。
 そんな頃、一人の男が玉依姫に近づいた。
 ある目的を胸に秘めて。
『その男は、住む地を追われたカミ。
 力ある渡来のカミたちに全てを追われ、常世神と成り果てた者。
 その者はすべてを失った。
 安心できる居場所、愛する家族、自分が何者であるかを証明できるすべてのもの。
 自分が大切だと思っていたすべてのものを、男は奪われた。
 男は泣き叫んだ。自分の失ったものの重さに。失ったものの温かさに。
 男は、もう二度と奪われるものを持たないと心に決めた。
 男は誓う。復讐を。渡来のカミを殺してやると言う感情が、男のすべてだった。
 殺し、殺し殺し殺し殺し殺し尽くして、すべてを終わりにしてやると。
 男にはその気持ちだけしかなく、未来永劫その感情と破滅を呼ぶ力が残るようにと誓う』
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