第二章 ゲームのはじまり

 前に守護者のメンバーに言った時は、呆れ一名、大笑い一名、温かい視線二名と言う微妙な反応が返ってきたものだ。
 今度も前述の反応のどれかだと思っていたが、褒めてもらえるなんて予想外だ。
 螢斗の真面目な言葉に、それが心から言っているのだと伝わって珠紀は、彼を見つめた。
 二人の間に沈黙が降りる。
 ふと珠紀は今の自分の状況を思い出す。教室に螢斗と二人きりなことを、急に意識した。
 夕暮れ。静かな教室。長く引く二つの影。そして、見つめ合う男女──。
 これは、映画や漫画にあるシュチュエーションだった。
 グラウンドで運動部の練習のかけ声が遠くに聞こえる。
 二人は無言のまま、見つめ合う。
 そこだけの空間が時間が止まったように、優しい静寂が続く。
 その静寂が永遠に続くかと思われた。
 バタンッ!
 突如、勢いよく扉が乱暴に開かれる。
 開いた衝撃で廊下側の窓ガラスが、雷が落ちたようにビリビリと揺れる。それらの音響が静寂を破った。
 その衝撃音に珠紀は、大きく身体を震わせた。
 驚いて目を大きく見開いて珠紀は、弾かれたように扉に顔を向けた。
「拓磨!」
 振り向くとそこに、拓磨の姿があった。
「たく──」
 もう一度、拓磨の名前を呼ぼうとしたが、珠紀は思わず言葉を飲み込む。
 入り口に立つ拓磨が、ただならぬ気配を纏っているからだ。
 ゆっくりと俯いていた拓磨の顔が上がる。
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