第二章 ゲームのはじまり

 そこには、珠紀と彼の二人だけしかいない。
 ──どうして、どうして、私は……。
 真っ暗な闇に突然、真っ白な色が差し込んだ。
 白いものが幾重も舞い落ち、珠紀の視界を真っ白に染める。
 ──あ、これは。
 珠紀の意識は、そこでまた暗闇に戻る。
 漆黒の暗闇の中──茶と青の色違いの瞳がじっと自分を見つめている。
 悲しみ、怒り、嫉妬、恨み、憐れみが含まれていた。
 その目を見た珠紀は、言いようのない恐怖を感じた。
 ガバッと身を起こすと、額に汗を掻いていた。
「……はぁ……はぁ……」
 息を吐き、目から冷たいものが頬に流れる。
 頬を拭くと、指が軽く涙で濡れていた。
 珠紀の中で、言い知れない不安が大きくなった。

🍁

 夕方の校舎の廊下を珠紀は、自分のクラスの教室へと向かう。
(あぁ、最悪。忘れ物するなんて!)
 拓磨と帰ろうとした珠紀は、玄関で忘れ物をしたことに気がつく。
 拓磨には玄関で待っててもらい、忘れ物を取りに教室に戻っていた。
 待たせているので、足早に向かう。
 入ると、教室にオレンジ色の光が差し込んでいた。
 木材の教室に差す夕日の光は昼間と違い、物悲しさを感じさせる。
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