第二章 ゲームのはじまり

「私より、猫沢君は大丈夫? 私、思い切り背中にぶつかったから」
「俺は大丈夫だよ。よかった、春日さんに怪我がなくて。女の子に怪我させなくて済んで」
 珠紀の態度に螢斗は、ふっと笑みを浮かべて安心して言った。
 珠紀は、その笑みに胸がドキッと小さく鳴った。
「早く、理科室に入ろっか」
 螢斗に促され、珠紀は彼と共に理科室へと入った。
 珠紀と螢斗が一緒に理科室に入って来るところを、拓磨は自分の席に座って見逃さなかった。
 そのことに顔が、いつもの何倍も無愛想になったのだった。

🍁

 いつものように彼と、彼の後ろに控える彼女がいた。
 彼は今日のことを思い出し、笑みを抑えることができなかった。
 彼女と彼女が出逢ったこと、彼女と自分が接触したことはまったくの偶然だった。
 どう彼女に近づこうかと思っていたところに、なんという運の巡り合わせか。
 天は、自分に味方しているとしか思えない。
 さぁこれから、どうお近づきになろうか考えると、笑いが止まらなかった。
 笑みを浮かべて、窓の外に目をやる。
 感じる。無数の気配が、この季封村に集まって来ているのを。彼の笑みが深まる。
 ──我が、同胞たち。
 彼は思念を無数の気配に送る。
6/19ページ
スキ