序章 千年の始まり

天地てんち初めてひらけし時、高天原たかまのはらに成れるカミの名は、天之御中主神あめのみなかぬしのかみ……』
 ──天之御中主神。この世に、一番最初に生まれたカミ。
『天地が初めて分かれた時、高天原に成り出たカミの名は、天之御中主神であった。
 主神にして一のカミ、全ての始まりのカミは然し、現れてすぐに姿をお隠しになった。自分のような力ある存在がこの世にあっては、次のカミが生まれないと考えたからだ。
 しかし天之御中主神は隠れる際に自らの半身を剣に宿し、それを地に落とした。万象に先駆けて存在したその剣は、どのカミよりも古く、またどのカミよりも力を持っていた。
 一のカミはこうお考えになった。これから生まれる弱き者、小さき者に戦う術があるように、また自分の力がすべからく世の隅々まで浸透するように。
 のちに五柱のカミが生まれ、神代七代となり、また更に数多のカミが生まれた。
 その剣は悪しきものが使えば全てを滅ぼし、よきものが使えば今生の世を清浄にすると言われた。神代の御世みよとなると、カミたちは無限の力となりうる一のカミの剣を巡り、争いを続けた。それは闇を呼び、地を割り、海を荒れさせ、地上を今あるような形とした。
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