第二章 ゲームのはじまり

 年齢と身分を隠し、生徒の姿を借りて、玉依姫を監視するために国の機関の典薬寮から派遣されていた。
 赤いフレームの眼鏡に明るい性格が特徴の女性だ。珠紀のことを『心の友』と呼ぶ。
 鬼斬丸事件の時はいろいろあったが、今でも交友を続けている。
 現在は東京に戻り、典薬寮の役人として、鬼斬丸事件の事後処理を行っている。
 たまにこうして、休日に珠紀に近況報告や世間話などで電話をかけてくる。
 今日は先日あった拓磨との諍いを話した。
「あぁ、青春だね。ブルースプリングだなぁ~。確実に大人の階段上っていくなぁ。お姉さんは誇らしいような寂しいような、ちょっと複雑な気持ちだよー」
 肘でグリグリと二の腕を攻撃してくる清乃が、電話の向こうから見えるようだ。
(清乃ちゃん、その英語間違ってるし、いちいちアクションがレトロだよ。それに、発言が年寄り臭いよ)
 前にも、こういうセリフ言ってたな、と珠紀は思い出す。
「鬼崎君に愛されまくってるなぁ。男の影どころか、男の『お』の字もない私からしてみれば、十分、今の話はおノロケだよ。羨ましい限りだよ」
 聞こえてくる声が嬉々から、暗いものへ変わる。
 電話の向こうで、清乃が肩を落とすのが目に見える。
 その様に、珠紀は苦笑した。
 そんなやり取りを続けて、昼間を潰していった。

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