第一章 季節外れの転入生

「夫婦喧嘩の原因はなんだ?」
 焼きそばパン片手に近寄って来た真弘が、諍いの理由を問い質す。
「聞いてよ、先輩! 拓磨ったら、しつこいんですよ。見つめてないって言ってるのに、見つめてたって言うんですよ!」
「落ち着けって。まったくもって、話がわからん。ちゃんと、説明しろ」
「ごめんなさい……」
 真弘に言われ、珠紀は落ち着いてから、もう一度、諍いの理由を話す。
「実は、今日クラスに転校生が来たんです」
「ほうほう、それで?」
「それで、転校生が席に行く途中で私の席の隣の廊下側を通り過ぎようとした時に、私と転校生が一瞬見つめ合ったって言うんですよ。ただ、一瞬目が合っただけですよ?」
「あぁ、なるほど」
 一通り話を聞いた真弘はコクコクと頷いてみせてから、拓磨を見た。
「拓磨。珠紀がこう言ってんだから、そうなんだろうよ」
「でも、先輩! あれは、絶対見つめ合ってたすよ!」
「だ・か・ら、見つめ合ってないってば!」
「もう止めろって。拓磨、男の嫉妬は醜いから止めろ。珠紀は自分で見つめてないって思ってんなら、それでいいじゃねぇか? ──はい! これで、言い争いは止めろ。いいな?」
「……うす」
「……はい」
 真弘に諫められ、珠紀と拓磨はあまり納得はしていないものの、渋々納得した。
「ところで──」
 言い合いが止まったところで、真弘が机に両手を置き、身を乗り出す。
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