第一章 季節外れの転入生
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午前の授業の終業の鐘が鳴り、昼休みになる。
昼はいつも屋上で、守護者のみんなとご飯を食べるのが通例なのだが、雪積もるこの季節は使っている屋上が雪が積もっているため使えない。
なので、教師に許可を得た空き教室でいつもの面々と食べるので、珠紀と拓磨は弁当を手に席を立つ。
本当は一学年上なのだが留年して同じクラスの玉依姫を守る守護者の一人──狗谷遼を誘おうと、彼の席を見たが、すでに席にも教室にもいなかった。どうやら、先に教室を出たらしい。
教室を出ようとする拓磨の後ろについて、珠紀も教室から出ようとする。
教室を出る途中に、なに気なく転校生の方に目をやる。
席に座る転校生の周りに、次々クラスメートが集まる輪の中心にいる彼が見えた。
転校初日にも関わらず、彼はもうクラスに馴染んでいる。
『ねえねえ。猫沢君。趣味はなに? 好きな食べ物と嫌いな食べ物は?』
『引っ越す前はどこにいたの?』
『はいはい! 質問! 好きな女子のタイプは?』
集まるクラスの皆から質問攻めにあっても、嫌な顔や苦笑い一つせずに、にっこりと人当たりのよい笑みを浮かべている。
笑顔で、一つ一つ質問に答えていた。