第一章 季節外れの転入生

 性別を超越して、『きれい』と言う言葉の似合うところ。すらりとした身長、端正な顔、涼しげな目元、白い肌──。
 肌もパーツの位置が、なにもかもが人間離れしているところも、祐一と似た幾つかの共通点が重なって、少し親近感を持つ。
「猫沢君は、窓側の列の一番後ろの空いている席だ」
 彼は、教師が指差した席に向かって歩いて行く。
 窓側の列の席は珠紀と拓磨が座る席側の列のことで、転校生の席は珠紀と拓磨が座る窓際の列の隣──通路側の列の一番後ろの席だ。
 彼がこちらに向かって歩いて来るのを、珠紀は目で追う。
 珠紀の横を通り過ぎようとした時、珠紀と彼の目が合う。
 その一瞬、彼は珠紀を見て、ふっと意味深な笑みを浮かべたが、すぐに何事もなかったように、自分の席に向かった。
(え……今、私を見て笑った……?)
 珠紀の中に、疑問を生じた。決して自分がナルシストとかではなく、明らかに転校生は、通り際、珠紀を見て意味深な笑みを浮かべた。
 しかし珠紀は、笑みを向けられる心当たりがない。
 そもそも、珠紀と彼は今日が初対面なのだから。
 そう考える珠紀の真後ろの席に座る拓磨は、少し不機嫌だった。そのことに、彼女は気づかなかった。
 拓磨は、あの一瞬の珠紀と転校生の妙な空気を見逃さなかった。
 考える珠紀と、悶々とする拓磨をよそに、始業の鐘が鳴った──。
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