第一章 季節外れの転入生

 まばらだった生徒は席に着き、雑談が止み、しばらくして教室の扉が開き、担任教師が入ってくる。
 その後ろについて、もう一人──紅陵学院の制服を着た生徒も入ってきた。
 教師が教壇に立ち、男子生徒は教卓の隣で止まり前を向いて立つ。
 教師がチョークで黒板に大きく名前を書いていくと、前を向き、口を開く。
「時期外れではあるが、今日からこのクラスに転入した猫沢螢斗君だ。猫沢君。君からも一言」
 猫沢螢斗と自己紹介されたのは、男子生徒だ。
 すらりとした身長、端正な顔、切れ長の眼、サラリと音を立てそうな眼を惹く金色の髪──。ビシッと制服を着崩れさせたりせず、綺麗に着こなしていた。
 外人かと間違いそうだった。
 見れば見るほど、綺麗な人だ。
 教室のあちこちから男子のがっかりした小さな溜め息を漏らす声が聞こえる。女子は、小さく黄色い声を出す子や、頬を赤く染めている子がいた。
 珠紀は転校生を見た一瞬、祐一と初めて出逢った時のことを思い出す。
「猫沢螢斗です。こんななりをしてますが、ハーフとかじゃなく日本人です。みなさん、よろしく」
 形の良い唇が、短い自己紹介の言葉を発した。落ち着いたトーンの声色で。
 落ち着いた声音に、余計祐一に似た雰囲気を感じた。
7/14ページ
スキ