第一章 季節外れの転入生

「見せつけてくれるぜ」
「熱いねぇ、若夫婦!」
「夫婦じゃありません!」
 珠紀はビシッと訂正して、拓磨を追いかけた。
 今ではすっかり、クラス公認のカップルになった二人。
 公認になる前は、ほぼ毎日クラスの男子にからかわれていた。
 今はそれも落ち着いたが、ちょいちょいからかいの声がかかる。
 からかいはじめられた当初は、気恥ずかしくてなにも言い返せなかったが、からかいにも慣れて言い返せるようになった。
 珠紀と拓磨が教室に入ると、いつもより少し騒がしい。
 なんだか浮き足立っている感じがする。
 ちらほら『男子かな』『女子かな』など話し声が耳に入ってくる。
(なにかあったのかな?)
 気になって、前の席の女子に尋ねてみる。
「おはよう。なんなの、この騒ぎは」
「おはよう、珠紀ちゃん。なんでも今日、クラスに転入生が来るんだって。それで、この騒ぎ」
「なるほど……」
 そういうことかと納得して、首をゆっくり縦に振りながら頷いてみせる。
「季節外れの転入生……ミステリアスだね。犯罪の匂いがするよね、珠紀ちゃん」
「あははは……」
 ミステリー好きの前の席の女子に、珠紀は苦笑いを返すしかなかった。
 苦笑いをしながら、鞄を机の横にかけて席に着く。
 席に着くと、ちょうど、予鈴が鳴った。
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