第一章 季節外れの転入生

 平日の朝の日課になった登校の迎えがきた。
 火の用心と窓の戸締まりの確認すると、居間に置いてある鞄を肩にかけ、玄関先へ向かう。
 向かった先には、鬼崎拓磨がいつものように立って待っていた。
 その姿を見ただけで、自然と頬が緩んでしまう。
 前を向いていた拓磨が後ろを向く。
「おはよう、珠紀」
 その声を聞くだけで、胸が小さく高鳴る。
「おはよう、拓磨」
「行くか」
「うん」
 玄関の鍵をかけ、今日も二人並んでキラキラと輝く雪積もる道を歩き出した。
 十二月某日──。
 クリスマスも近い、冬真っ盛りの季節。
 村は、道も木々も雪を被り、見渡す限り一面雪景色が広がっている。
 仲間たちと一緒に、世界を滅ぼす力を持つ妖刀──『鬼斬丸』を巡る争いを経て、鬼斬丸を完全に封印し、両親から季封村で暮らす許可を貰って村に帰って来た珠紀が、正式に玉依姫を継承して、もうすぐ一ヵ月が経とうしていた。
(もう随分、昔のことみたいに思ってしまうなぁ)
 本当にあの戦いの時は、こんな平和が来るとは思えなかった。
 話しながら歩いていると、あっという間に学校に着いてしまう。
(もう少し、学校が遠ければいいのに……)
 などと思ってしまう。
 同じクラスの二人はそのまま並んで、教室へ向かう。
 教室の行きかけに、廊下に居たクラスの男子から冷やかしの声をかけられる。
「お、今日も二人でご登校か?」
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