第一章 季節外れの転入生

 こうして、朝食と弁当を作り終えて、二人分の朝食を居間のテーブルに並べていく。
 今日の朝食はハム入りスクランブルエッグに、ロールパン、サラダ、オレンジ、牛乳だ。
「うん。美味しそう」
 朝食の立ち昇る芳ばしい香りが、鼻腔をくすぐり食欲をそそる。
 ちょうどそこに、一人の少女が顔を出す。
「おはようございます、珠紀様」
「おはよう、美鶴ちゃん!」
 珠紀と同じ紅陵学院の制服に身に纏い挨拶するのは、この宇賀谷家で同居している言蔵美鶴。
 以前は珠紀の祖母──宇賀谷静紀の付き人として宇賀谷家で暮らしていた少女。
 現在、珠紀は美鶴と二人で暮らしている。あと、オサキ狐と。
 彼女は珠紀が季封村に戻って来た時に暇をもらおうとしたのだが、珠紀の強い希望もあり、宇賀谷家に残ることになった。
 行くのが憧れだった学校も珠紀の再三の願いもあって、この冬からに紅陵学院に通うようになったのだ。
 今日の掃除当番の美鶴は、境内の掃き掃除を終えたところだった。
 美鶴が揃ったところで、席に着いて朝食を摂る。
 朝食を食べ終え、食器を片付けると、今日は日直だからだと美鶴は、珠紀が作った弁当を持って先に家を出た。
 珠紀は迎えがくるまでに、食器を洗い片づけた。
 ちょうど、食器を食器棚に仕舞い終わったところで、玄関の方から珠紀を呼ぶ声が聞こえた。
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