🎻・🎼『とある御夫人の想い出話』

物をたの──」
「はい、真莉亜。こうでーす」
「……?」
 夫が持っている傘を手に取り広げて、ピトッと笑顔で彼に身体を寄り添い、娘にあいあい傘を披露した。
 帰ってきて早々、当然のことながら状況が飲み込めない蓮は頭に疑問符を浮かべる。
 なぜ玄関で、しかも屋内で、あいあい傘をしているのだと、そのまま黙って、最愛の妻に顔だけを向けた。
 自分に寄り添い頬を赤く染めて満ち足りた幸せな表情のかわいい愛妻に、そんな疑問などは霧散し、蓮もまた同じ満ち足りた幸せな表情を浮かべた。
「よくわからないが、嬉しいよ香穂子……」
「蓮……私も……」
 傘の中で甘く囁く蓮と香穂子は、さらに身
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