🎻・🎼『とある御夫人の想い出話』
「もし付き合っていたら、完全にあいあい傘だったわねぇ」
香穂子は笑って付け足す。
「ねえねえおかあさん、あいあいがさってなあに?」
「それはね──」
玄関の扉が開く音に気づく。香穂子は、閉めてあるリビングの扉の方を向く。
「あらちょうど、蓮と藍が帰ってきたわね」
膝の上から娘を降ろす。
椅子から立ち上がってリビングの扉の前で人差し指を唇に当て、笑顔で娘に振り返る。
「今見せてあげる」
二人で玄関へ出迎えに向かった。
そこには、最愛の夫と夫に瓜二つの愛息子がご帰宅していた。
「ただいま香穂子、真莉亜。途中で風に吹かれた。少し雨で濡れてしまって、なにか拭く