🎻・🎼『とある御夫人の想い出話』

 傘を持っていなかった彼と、居合わせ自分
の傘に入れてあげた。
 それでさり気なく、彼は傘を持ってくれたことがまた嬉しくて。
 途中、本屋に寄って少し買い物して店を出たら雨は上がっていた。なんだか、残念な気持ちになった。その理由はその時はわからなかった。
「道すがら何か買ったのか?」と聞かれ、お世話になってる人と答えたら。
「──そしたらおとうさん、なんて言ったと思う?」
「ん~~~~……」
『……一つで足りるのか?』
「──って。悪気がないところが、また失礼だよね」
 悪態をつくが、それも今では、いい思い出で香穂子は笑う。
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